日本人ランナー向けサービスも充実 初めてのシドニーマラソンを採点

南井正弘

日本人ランナー専用のカウンターも用意

【写真提供:南井正弘】

 筆者はハーフマラソンにエントリーしたが、レース前日にシドニー中心部のタウンホールで行われたエクスポでゼッケン、参加シャツ(スポーツ用品のオフィシャルスポンサーのアシックス製ノースリーブ)を受け取る。これまでに参加したニューヨークシティマラソン、ロサンゼルスマラソン、ロックンロールマラソン ラスベガス/シアトルといった大会のエクスポと比較するとその規模はかなり小さい。2009年と2010年に走ったポートランドマラソンのエクスポと同じくらいだろうか?

 エクスポの規模こそ小さいものの、スポーツ用品のオフィシャルスポンサーにはアシックス、ランニングディバイスのオフィシャルスポンサーにトムトムといった各業界のトップブランドが就いている点は、オーストラリア随一の都市で行われる大規模大会ならでは。会場ではシドニーランニングフェスティバルのレースディレクターのウェイン・ラーデン氏とトムトムのアジア・パシフィック担当副社長のクリス・カーニー氏のインタビューも行われ、ラーデン氏は「年々シドニーマラソンの参加者は増加しており、フルマラソン単体ではメルボルンマラソン、ゴールドコーストマラソンの参加者数には及びませんが、すべての競技の合計参加者では歴史ある二大会を凌駕しており、今後もエントリー者数は増え続けることを確信しています」とコメント。

 シドニーマラソンは日本からのランナーも少なくなく、10月1日(土) 14:00〜14:55で、BSフジでダイジェストが放送されたように、日本との関係も深い大会といえるだけに、ラーデン氏は今後日本からのランナーの大幅な増加を期待しているようだ。エクスポには日本人ランナー専用のカウンターも用意されており、これは英語に不安のあるランナーには本当に嬉しいサービスとなることだろう。

 一方でクリス・カーニー氏はトムトムにとってシドニーランニングフェスティバルは重要な大会であることに加え、トムトムスパークを始めとした自社のランニング用ディバイスの性能の高さと操作性の容易さを強調していた。

【写真提供:南井正弘】

 参加Tシャツはアシックス製のノースリーブデザイン。カラーリングやロゴの配置など、アメリカの大会とは全く異なったデザインテイストとなっている。なんといっても大会名よりも冠スポンサーであるBLACKMORESのロゴとコーポレートメッセージの”Be a Well Being”のほうが圧倒的に大きなサイズであるのが印象的だ。

【写真提供:南井正弘】

 スポーツ用品のオフィシャルスポンサーはアシックス。参加シャツの提供だけでなく、Tシャツやトレーニングジャケットを始めとした数々の記念アパレルがエクスポでは販売されていた。オペレーションはオーストラリアをリードするスポーツ用品チェーンであるrebelスポーツが担当。

【写真提供:南井正弘】

 シューズは基本展示のみで、購入はエクスポそばのrebelスポーツの支店を紹介されるパターンだった。

【写真提供:南井正弘】

 ランニング用ディバイスのオフィシャルスポンサーはトムトム。当地では愛用しているランナーを頻繁に見かけるなど、高いシェアを誇り、カーナビのシェアにおいてもトップクラス。
 シドニーマラソンの魅力を語る(右)レースディレクターのウェイン・ラーデン氏と(左)トムトムのアジア・パシフィック担当副社長のクリス・カーニー氏。

参加ランナーは往復の運賃が無料!

 当日の天気予報は雨だったが、起きて外に出てみると雨は降っていない。実は5月のブルックリンハーフ、6月のロックンロールマラソン シアトルと二大会連続で高い確率の雨予報を覆すなど、最近は晴れ男を自認していたので、今回もあまり心配はしていなかったが、実際に雨が降っていないのを確認できたのは本当に嬉しいこと。外に出てみると肌寒いので、「スタートまでに羽織っておく薄手のジャケットが必要だ!」と思った。

 ハーフマラソンのスタートはすべての競技で最も早く、朝6時のスタート。普通は距離の長いレースからスタートするが、シドニーランニングフェスティバルではフルマラソンのスタート(7時05分)よりも1時間早い。宿泊先のプルマン シドニー ハイドパークからタウンホールの駅まで歩くと、駅にはランナーだらけ。ゼッケンを提示すると運賃は行きも帰りも無料とのこと。これはホント素晴らしいシステムで、日本でも真似してほしい。

 二つ目のミルソンズポイントで降りるとスタート場所まではすぐだったが、スタートエリアはニューヨークシティマラソンのスタッテン島やロサンゼルスマラソンのドジャースタジアムあたりと比較すると「ここで本当に大規模な大会がスタートするの?」といった雰囲気の場所で、スタートの15分前くらいになると、ランナーは指定されたコラルへと向かい始める。筆者はAというコラルなので最初にスタートする区分。自分のすぐ隣に110分(1時間50分)のペースランナーがスタンバイしていたが、アメリカや日本の大規模大会と比較すると、ランナーはあまり前へ前へといった感じがない。

想像以上にタフなコース!

 午前6時にスタートすると最初から強烈な登り、そしてその後に下り。これがこの大会の名物となるハーバーブリッジ以降も延々と続く。シドニーという街の印象とは大きくかけ離れた、想像以上にタフなコースが脚を痛めつけることとなる。

 コース自体はシドニー最古の街のひとつであり、レンガ造りの建物が趣のあるエリア「The Rocks」も走るなど、変化があって楽しい。ロサンゼルスマラソンのドジャースタジアムをスタートし、リトルトウキョウ、ハリウッド、ビバリーヒルズを経てサンタモニカでゴールする豪華なコースには敵わないものの、普段は走れないハーバーブリッジの車道部分を走れたり、ゴールも街を象徴する観光名所であるオペラハウスなので、この大会を走ることによってシドニーという街をダイジェストで感じることができる。

 走っている途中で思わず立ち止まって景色を眺めていたくなるポイントもいくつかあった。20km地点では対岸にゴールのオペラハウスが見える。ここまでくると地形はフラットになり、軽快な足取りでカフェにてコーヒーや朝食を楽しむ人々の横を駆け抜けてオペラハウスのゴールでフィニッシュ。アップダウンのキツイタフなコースだったが、脚は意外と残っていたので、後半はあまりペースを落とさずに、手元のトムトムスパークで2時間1分12秒、公式タイムは2時間0分48秒(ネット)。ちなみにトムトムのMySportsというアプリによると累積標高は520m。ハーフマラソンの距離としてはかなり標高差がある。このレースの前に参加したハーフマラソンは6月のロックンロールマラソン シアトル大会で、シアトルも坂の多い街だったが、シドニーはそれ以上に高低差のあるコース設定であった。

さすがスポーツ先進国らしい大会、惜しむらくは……

シドニーマラソンのコースのメインとなるのはなんといってもハーバーブリッジ。 【写真提供:南井正弘】

 筆者にとって初の南半球でのレースとなったシドニーマラソン。オーストラリアは人口の割合からするとオリンピックでのメダル獲得数の多いスポーツ先進国らしく、ランナーの平均的なレベルも高く、極端にペースを落とす人も少なく走りやすい。アメリカの大会だと前のほうのコラル(区分)からスタートしているのに、異常にペースの遅いランナーが紛れ込んでいて走りにくいことも少なくなかったが、この大会では正直にタイム申告をして適正なコラルからスタートしていたランナーが多かった気がする。

 惜しむらくはアップダウンの多いコースは記録が出しにくいことと、沿道の応援がアメリカに大会と比較してかなり少ないこと。アメリカの大会ではニューヨークシティマラソンを筆頭に沿道の応援が本当に力になるが、ここではそれが期待できない。ただしスタートエリア、ゴールエリアのアクセスのしやすさや、ゼッケンを提示すれば公共交通機関が無料というサービスのよさは素晴らしい。アメリカやヨーロッパの大会では悩まされるジェットラグ(時差)の問題もないのも大きなアドバンテージだ。

 ちなみにこのシドニーマラソン、日本からも数多くのツアーが企画されており、海外渡航に慣れていないランナーも気軽に参加できる。またシドニーという街は旅慣れたランナーが航空券、宿泊先を自ら手配するFIT(個人手配旅行)にも向いており、かなり治安がいい点も海外マラソン初心者にオススメしたいポイントである。9月〜10月をレースシーズンのスタートと捉えるランナーは少なくないが、その初戦に設定するのも悪くないだろう。

ハーバーブリッジでポーズを決める参加Tシャツを着用した日本人ランナー。Photographed by Kellie La Franchi 【写真提供:南井正弘】

ゴールはシドニーの観光名所として有名なオペラハウス。Photographed by Jason McCawley 【写真提供:南井正弘】

ファミリーラン(3.9km)では、こんな感じで仮装して走るランナーも少なくない。 【写真提供:南井正弘】

フルマラソン男子の部の優勝はコニカミノルタの谷川智浩選手。Photographed by Kellie La Franchi 【写真提供:南井正弘】

今回のレースをサポートしてくれたのはトムトムのスパーク。直感的に操作できる点と見やすいディスプレーがいい。 【写真提供:南井正弘】

トムトムの無料アプリMySportsではこんな感じでランの結果を確認可能。ハーフマラソンの距離で累積標高520mはやはりキツかった。 【写真提供:南井正弘】

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著者プロフィール

フリージャーナリスト。1966年愛知県西尾市生まれ。スポーツブランドのプロダクト担当として10年勤務後、ライターに転身。スポーツシューズ、スポーツアパレル、ドレスシューズを得意分野とし、『フイナム』『日経トレンディネット』『グッズプレス』『モノマガジン』をはじめとしたウェブ媒体、雑誌で執筆活動を行う。ほぼ毎日のランニングを欠かさず、ランニングギアに特化したムック『Runners Pulse』の編集長も務める

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