切磋琢磨し、成長を続ける森山ジャパン 2大会ぶりのU-17W杯出場権獲得に挑む

安藤隆人

良好なライバル関係の中で成長を遂げている選手たち

話題は久保(写真)に集中しがちだが、U−16代表は良好なライバル関係の中で全員が成長を遂げている 【安藤隆人】

 中盤と前線には、非常に個性的な選手がそろった。どうしてもこの世代で注目度ナンバーワンのFW久保建英に話題が集中してしまうが、周りの選手も刺激を受けながら大きく成長をしている。同じFC東京U−18に所属するMF平川怜は、「建英は年下だけれど、すごく尊敬しています。でも、活躍すると『自分も』という気持ちになるし、負けられません。いい刺激になっています」と語り、今年に入ってからの伸び率はすさまじいものがある。平川とボランチコンビを組む福岡慎平は、パスセンスと要所で前線に飛び出していける攻撃センスが持ち味。器用さが魅力のMF喜田陽、頭脳派ユーティリティープレーヤーのDF菅原由勢など、多士済々だ。

「本気で戦う、ボールに食らいつく。そういうところを見せないと、この代表では生き残っていけない。代表で何回も選ばれていくうちに、他の選手の良いところ、ハードワークをしている姿勢に大きな刺激を受けた。自分も安泰ではないし、負けられない」と平川が語ったように、それぞれの選手が切磋琢磨(せっさたくま)をしながら、良好なライバル関係の中で成長を遂げている。

 その観点で見ると、攻撃陣の競争はかなりハイレベルな次元で行われている。今回選ばれたFWは山田寛人、宮代大聖、棚橋尭士、中村敬斗、久保の5人。5人とも個性が違い、それぞれがストロングポイントをしっかりと持っているため、状況に応じた組み合わせで、バリエーションあるアタックが構築できる。

ゴールへの意欲の高さはFW陣全員に共通

ゴールへの意欲の高さはFW全員に共通しており、それがより激しい競争を生み出している 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 180センチの山田はFW陣の中で一番高さがあり、かつスピードが武器の選手。ディフェンスラインとの駆け引きがうまく、相手の裏を取って抜け出していける。宮代は足元の技術とボールキープに長けており、前線でタメを作れて、かつ背後も狙える万能型。棚橋はとにかく点を取ることに飢えた勝負強いストライカーだ。中村はずば抜けたシュート技術を誇り、多彩なキック、そして広いシュートエリアを持っている。

 久保はファーストタッチに優れ、リズムよく相手を交わしていけるし、両足から強烈なシュートを打つことができる。「とにかくボールを持ったらゴールに向かう。これは今の日本の選手が失いかけていることで、ボールを要求しまくって、ボールを持ったら迷わず仕掛けていく、ゴールに向かっていく。『ボールを持ったらゴールにいくんでしょ?』という純粋なサッカー小僧」と森山監督が評するように、迷いのない仕掛けは相手にとって大きな脅威となるだろう。

「FWは点を取る。他のFWの選手たちはすごく意識が高いし、ゴールを狙っている。自分もそこは強い意識を持ってやっている」(中村)と、ゴールへの意欲の高さは全員に共通しており、それがより熾(し)烈な競争を生み出している。

「今回のメンバーは(所属クラブの)U−18のチームでスタメンを取っている人数がかなり多い。お互い『あいつには負けたくない』、『こいつには負けたくない』という気持ちがあって、刺激し合っている。

 たとえば中村がものすごいシュートを打てるようになって、彼がどれだけ努力をしているかが分かる。じゃあ『他の選手はどうだ?』というときに、周りが変わらなかったら、それは努力とは言わない。『僕、頑張りました』ではダメ。成長を遂げた選手が身近にいることで、それを見て『俺も負けたくない』と思って、チームに帰っても高い意識でやってくれていると思う」(森山監督)

 インドの地でも競争は続く。もちろん、U−17W杯出場権をつかみ取り、さらにアジアを制して、AFC U−16選手権後も新たなタレントを交えて競争を激化させていくだろうし、そうならなければならない。「成長の好循環」を生み出すために。まずは選ばれし23名の選手たちが、インドでこれまでの成果を示すことが重要となる。

2/2ページ

著者プロフィール

1978年2月9日生まれ、岐阜県出身。5年半勤めていた銀行を辞め単身上京してフリーの道へ。高校、大学、Jリーグ、日本代表、海外サッカーと幅広く取材し、これまで取材で訪問した国は35を超える。2013年5月から2014年5月まで週刊少年ジャンプで『蹴ジャン!』を1年連載。2015年12月からNumberWebで『ユース教授のサッカージャーナル』を連載中。他多数媒体に寄稿し、全国の高校、大学で年10回近くの講演活動も行っている。本の著作・共同制作は12作、代表作は『走り続ける才能たち』(実業之日本社)、『15歳』、『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、『ムサシと武蔵』、『ドーハの歓喜』(4作とも徳間書店)。東海学生サッカーリーグ2部の名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント