岩隈の評価通りだった田中の投球 かつての楽天2枚看板による緊迫の投手戦
集中力を切らさず6回を投げた岩隈
田中との緊迫した投手戦を演じたマリナーズ岩隈。6回3失点だったが、岩隈らしい集中力の高いところを見せた 【Getty Images Sport】
序盤、制球が定まらず、3回までに57球を擁した。そして4回までに3失点。そのままなら5回で降板か、というペースだったが、結局、6回(100球)を投げきっている。
「よく、6回まで投げられたと思います」
岩隈は安堵の表情でそう話し、この日のピッチングを総括すると、走者を度々背負い、しかも制球がままならない中で集中力を切らさず、「我慢して投げることが出来た」と胸を張った。
だが、話している途中で、割り切れないものもあった。今日の調子を考えた場合、3点も取られたという感じか、あるいはよく3点で抑えたという感じか、と聞くと、「難しいですねぇ」と答えた後、「3点も取られたという気持ちもするし……3点も取られた、という気分の方が強いかな」と小さな声で続け、さらに言った。
「やっぱり、あれだけの投げ合いだったし、抑えたい――先制点を与えないピッチングをしたいなって思っていた」
結局、岩隈は6回を投げて、6安打、3失点。田中は7回を投げて6安打、無失点。
ともに序盤は制球が乱れ、相手を圧倒するような内容ではなかったが、揃って回を追うごとに修正し、高い適応力を見せつけている。2人の日本人投手が、それぞれの持ち味を発揮した。
2人のWBC参加に興味津々!?
「2人ともWBCに出るのかい?」
日本とオーストラリアは同じグループ。それだけに気になるようだが、その可能性が微妙なことを伝えると、少しほっとした表情を見せた。
岩隈と田中。もちろん侍ジャパンに参加できれば大きな戦力だが、一年一年が勝負の35歳の岩隈にとって、3月の調整期間に無理は出来ない。そもそもこの日、162イニングを超えて来季の契約が延長されたことで、彼だけの意思では決められなくなった。日米野球に参加するだけでも、最後まで難色を示した保守的なマリナーズ。岩隈のWBC参加には大きな障害となるはずだ。
田中も状況は似ている。ルール上、チームが出場に制限を加えることは出来ないが、限りなくそれに近い“提案”は出来る。田中の場合、2年前の夏、右ひじの靭帯を損傷した。昨年のオフには、遊離軟骨の除去手術を受けた。よって去年も今年も登板間隔を開けるなどチームは配慮して来たが、そこまで気を使っている投手を、3月にWBCのような大会に登板させることには、やはり、ヤンキースとしては積極的にはなれない。田中としても、その意を無視することはできないのではないか。
「いろいろ事情があるようだな」とローランドスミス。そう、他の日本人大リーガーに関しても、事情は複雑だ。
29日は岩隈vs.ダルビッシュ
来週29日は、岩隈とダルビッシュ有(レンジャーズ)の投げ合いが予定されており、楽しみな試合が続く。
「そんなに煽らなくていいです」
岩隈はそう言って笑ったが、夏休み最後のビッグマッチアップまであと1週間となった。