リオで魅せた“ジャパンズウェイ” 世界を驚かせた日本の女子バスケ

小永吉陽子

吉田「小さいチームでも世界と戦えると証明できた」

キャプテンとしてチームを引っ張った吉田。試合後のコメントでは悔しさを交えながらも得た手応えについても語った 【Getty Images】

 ベラルーシとブラジルを早々に食った日本は、20年間超えられなかった予選ラウンドの壁を一気に突破して、決勝トーナメントでの戦いを見据えて階段をのぼり続けた。老獪(かい)さを持つトルコには14点差で敗れ、世界ランク2位のオーストラリアには逆転負けを喫する悔しさも味わった。そして予選ラウンド最終戦のフランス戦では、13点差以上をつければグループ3位、15点差以上ならば2位となる運命の試合を迎えたのである。

 そのフランス戦では栗原が徹底マークにあう中で、吉田、本川、町田瑠唯が3ポイントを決めてカバーし合った。勝っているにもかかわらず、点差をつけるために“逆ファウルゲーム”を仕掛けてオフェンスチャンスを作り、最後は3ポイントが得意な三好南穂を送り出しカードを次々と切った。しかもこの試合は、フリースローの成功率が15/15本というパーフェクトな数字を残している。

 しかしそれでも、13点差以上をつけることはできなかった。勝つには勝ったが、細かいミスによって目標にはあと5点届かず。グループ4位で終わったことで、米国との対戦は避けられなかった。世界ランク4位に勝利したにもかかわらず「勝っても悔しい」(渡嘉敷)思いを抱くことなど、はじめてのことである。キャプテン吉田は悔しさを交えながらも、手応えをこのように語る。

「ここまでやれて良かったという達成感が多い中、オーストラリアに勝ちそうになったことで、メダルを狙いにいける瞬間が見えたので悔しさがあります。でも、日本のような小さいチームでも世界と戦えることは証明できました。この結果を受け止めて、次のステップに向けて頑張っていきます」

成長を止めないで日本が次にすべきこと

リオの地で課題をクリアし、躍進した日本。そのチャレンジと成長の物語はこれからも続いていく 【Getty Images】

 今、大会が終わって言えることは、目標のメダルには届かなかったものの、04年のアテネ大会以来、2度目の五輪での指揮を執った内海知秀ヘッドコーチと日本のチーム作りにおいて、長年の失敗を糧に取り組んだ成果を出すことができたということである。アジア予選を勝ち抜くことで世界最終予選を回避、4カ月という準備期間を得て海外のチームと対外試合を組み、高さとフィジカルに慣れる強化方針は、着実に日本の女子バスケをスケールアップさせた。

 そんな中で、世界の強豪と張り合えたからこそ、新たな課題も見つかった。トルコのようなチームが仕掛けるハーフコートの術中にはまった時はどう対抗するか。栗原や近藤以外のシューターを作ること、長岡萌映子や宮澤夕貴に代表される180センチを超えるフォワード陣の戦力を厚くすることだ。トランジションで運動量を前面に出すのであればこそ、総力で40分間戦える選手層が何より必要になる。

 長所を前面に出す強化の方向性は間違っていないが、弱点が明確な分、やるべきこともハッキリと見えている。20年東京五輪の前に、2年後のワールドカップでは決勝トーナメントでの駆け引きができるチームになるべく、経験値を積み上げていくことが重要になる。リオの地で次々と課題をクリアして躍進した日本のチャレンジと成長の物語はまだまだ続く。

2/2ページ

著者プロフィール

スポーツライター。『月刊バスケットボール』『HOOP』編集部を経て、2002年よりフリーランスの記者となる。日本代表・トップリーグ・高校生・中学生などオールジャンルにわたってバスケットボールの現場を駆け回り、取材、執筆、本作りまでを手掛ける。

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント