金メダルの内村航平が明かした苦しみ 「負けた方が楽」に込められた思い

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加藤「航平さんは日本の誇り」

個人総合をけん引し続けたた内村。加藤凌平(写真左)ら若手に体操界の未来を託す 【写真:ロイター/アフロ】

 こうしたレベルの上昇は、内村自身が引き起こしたとも言える。王者であり続けるために、内村は己のスタイルをとことん突き詰めた。技を実施したときの姿勢、つま先にまで神経をとがらせ、着地をきちんと止める。頂点にいる内村が進化し続けるため、それを追う選手たちも同様に、レベルを上げていった。

「8年間、僕が個人総合のレベルを一気に引き上げてしまって……。でも、それだけみんなできるんだということを真っ先に証明したと思っています。その上で、僕よりもっとできる選手が出てきて、まだまだ体操界の進化というのは止まらないと思うし、そういう意味では僕も貢献できているのかなと思います」

 体操の進化に最も貢献してきた男に与えられた「五輪2連覇」という勲章は、いわば必然の帰結だったのかもしれない。現在27歳。残された競技生活が、それほど長くないことを実感している。だからこそ次に続く世代へ期待を寄せる。

「ここまで、日本の個人総合が強い歴史を作ってきました。それを受け継ぐ選手が出てきてほしい。また体操界の進化のためにも、6種目を高難度でやり切るオレグには、もっと難しいことをやって、誰にも追いつけないところまで行ってほしいなと思います」

 共に個人総合の決勝に出場し、11位に終わった加藤凌平(コナミスポーツ)はこう言った。「航平さんは本当に日本の誇りだと思う」。内村と最後まで金メダルを争ったベルニャエフは「この伝説的な人間と一緒に競い合えていることがうれしい」と、尊敬のまなざしで仰ぎ見た。五輪史に残る逆転劇を演じた内村は、体操界に新たな歴史を刻んだ。

(取材・文:大橋護良/スポーツナビ)

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