独走の広島、2位に8差も不安は? よみがえる悪夢も広島OBは太鼓判

ベースボール・タイムズ

未だ3連敗はなし、だが……

29日のDeNA戦は4回8失点でKOされ自身の連勝が8でストップした野村 【写真は共同】

 山内氏が経験した「ひとつのつまずきが、それまで順調だった流れを大きく変えてしまう」という事態について、その他にも不安材料がいくつかある。

 投手陣では、先発の二本柱である左右のエースの「いい流れ」が、すでに止まってしまっている。左のエース・ジョンソンは、昨年6月から続けていた「連続クオリティースタート(6イニング以上で自責点3以内)」が、7月27日の巨人戦でストップしたこと。対して、右のエース・野村祐輔は、19失点で惨敗した29日のDeNA戦に先発して4回8失点で降板。それまで野村は自身8連勝を記録し、82年に北別府学が達成した球団記録の11連勝の更新も期待されたが、筒香の2発を含む3本塁打を浴び、その夢は途絶えた。この2人が今後のカギを握っているのは間違いない。

 チーム全体を見ると、今季の強さを示すデータとして「3連敗以上がない」ことが挙げられる。雨天中止をはさんで阪神、巨人相手に2連敗で迎えた7月28日の巨人戦では、相手先発が今季絶好調で、チームにとっては天敵となっている菅野智之だったため、今季初の3連敗が危惧されたが、1軍復帰を果たした福井優也の好投と田中広輔の2本塁打の活躍で勝利し、今季の勝負強さをあらためて示した。

 だが、この“3連敗の壁”が崩れてしまった時、チームはどうなってしまうのか。そのままズルズルと大型連敗、ということになれば、96年の二の舞になりかねない。

キーマンは1、2、3番と救援トリオ

 しかし、山内氏がその不安を一蹴する。

「96年に比べて、今は先発、リリーフともに投手陣の層が違います。あの年のように連敗地獄にはまってしまうことは、今年の投手陣では考えづらいでしょう」

 その山内氏は、優勝へのキーマンに投打で3人ずつ名前を挙げた。

「野手では田中、菊池(涼介)、丸(佳浩)の1、2、3番。この3人の打順は、開幕以来、変わっていません。これが得点力アップ、さらには好不調の波が少ない要因になっていると思います。投手陣ではリリーフの3人。ヘーゲンズ、ジャクソン、中崎(翔太)の3人は、防御率1点台前後で、終盤までリードすれば、今季は逆転負けも少なくなっています。勝っているゲームを落とさない。これが去年までとは違うところでしょう」

 最後に山内氏が心配したのが、ゲーム中の不可避なアクシデントである。

「96年は、終盤戦で4番を打っていた江藤智さんが、試合中に打球を目に受けて、離脱してしまうということがありました。今年の場合も、菊池や新井(貴浩)など、代わりの効かない選手が、死球などでいなくなったりすると、チームが急失速してしまいかねません」

 それでも山内氏は、「今季はルナが故障したら、ヘーゲンズが入ってリリーフが強化された。打撃ではエルドレッドが活躍し、彼が故障すればルナが帰ってくるなど、いい流れが続いています。選手層が厚くなっているからこその事で、ここも96年とは違うところだと思います」と分析する。
 
 「みんなが望んでいる優勝。僕はほぼ間違いないと思うし、楽しみにしています」

 だが、それでも不安は尽きない。25年もの長い間、歓喜を待ちわびたカープファンは、まだまだ枕を高くして眠れない日々が続きそうだ。

(文・大久保泰伸/ベースボール・タイムズ)

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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