暑い夏はシューズを脱ごう! 地力を呼び覚ます“裸足ランニング”

三河賢文

脚の“地力”を呼び覚ます

【三河賢文】

 裸足で走ることで、まず本来持っている脚の“地力”を呼び覚ませるという効果があります。私たちは通常、ランニングのみならず歩行時も含めて、外出時にシューズ(=靴)を履いているでしょう。このシューズには程度こそ違えどクッション性のあるソールが付けられており、着地した際に地面から受ける衝撃を和らげてくれています。しかしここに、実は地力を発揮し切れない原因があるのです。

 例えば骨折して、治療のため右腕に長期にわたりギプスを着用していたとしましょう。ギプスをはずすまで、右腕はほとんど使われることがありません。そして、いざギプスを外してみると、いったいどうなるか。使われなかった腕は筋力が衰え、細くなってしまいます。これは当然のこと。人の身体は「必要な状態」であろうとするため、ギブスを着用した状態で必要となる以上の筋力は備わらず、むしろその状態で十分な身体へと変化してしまうのです。
 では、脚はどうなのか。常にソールが衝撃を和らげていれば、脚そのものには、その和らげられた分の衝撃しか伝わりません。つまり脚は“靴を履いた状態”に十分な機能を残し、どんどん衰えてしまいます。特にランニングにおいては、脹脛やアキレス腱周りの筋肉に大きく影響するでしょう。

 しかし裸足で走ると、脚そのものが着地衝撃をすべて受け止めることとなります。すると少しずつその衝撃に耐えうるだけの筋力など機能が備わっていくのです。これこそ、本来人間が持っている脚の地力といえるのではないでしょうか。

 ただし、いきなり裸足でいつものように走るのはオススメしません。今の自分が受け止められる以上の衝撃を受ければ、それは怪我や痛みへと繋がってしまうでしょう。まずは歩いたり、ゆっくりと短めのジョギングを行ったり。少しずつ取り組み、機能向上に合わせて負荷を高めていってください。

フォーム改善には裸足が最適

【三河賢文】

「理想のランニングフォームを手に入れたい」「怪我しない走り方を身につけたい」などと考えるランナーは多いはず。そんな方は、シューズを抜いて走ってみましょう。

 シューズを履いた状態では、シューズがどのように地面と接しているか分かりません。右に傾いていたり、足先が開いていたり。これではフォームを改善しようとしても、“やった気”になって終わってしまうでしょう。上手く走れているつもりが、いつしか負荷が溜まって怪我してしまう……なんていうのも良くあることです。

 しかし裸足で走ると、自分の足裏の感覚からこれが明確に分かります。例えば踵から着地すると、膝まで衝撃が走るでしょう。左右に傾きがあると、過重側に大きなプレッシャーを感じるはずです。またつま先をよく見れば、足がハの字になっているなど癖が分かります。こうした状態が分かれば、あとは理想とするフォームと照らし合わせ、違っている部分を直していくだけです。

 着地位置や左右バランスを改善するだけで、怪我の予防へと繋がります。もちろん脚だけでなく上半身なども改善の余地はありますが、走りが変わるのを実感できるでしょう。先のシューズとの比較で述べた通り、裸足とはもっとも地面から衝撃を受けやすい状態。これは逆に言うと、裸足で楽に走れるということは、脚への負荷を最小限に留められていると捉えられます。
 負荷が少なければ、同じスピードでも疲労の蓄積が遅く、長距離を走ることができるはず。実際、私は裸足ランニングを始めて約3年半になりますが、以来フルマラソンの記録が向上しました。レース後の疲労にも大きな変化があり、例えば100kmのウルトラマラソンを走った後でも脚は元気です。さらに現在は月600kmほどが平均走行距離ですが、長く怪我とは無縁のランニングライフを送れています。全てが裸足ランニングの恩恵とまでは言いませんが、少なくとも何らかの効果があると実体験から感じているのです。

夏は走る場所に気をつけよう

【三河賢文】

 ここまで裸足ランニングについてご紹介してきました。中には「明日から実践してみよう」と感じて頂けた方もいるかもしれません。しかしこれからの暑い夏場は、走る場所に注意が必要です。例えば太陽に照らされたアスファルトなどを裸足で走ると、足裏を火傷してしまう危険性があるでしょう。そのため、例えば芝生などを走るようにしてください。
 尚、最近では裸足に近い感覚で走れるシューズも多く登場してきました。私の場合には、よくワラーチと呼ばれるランニング用のサンダルを使っています。これならシューズより非常に裸足に近い感覚で、ある程度の安全を保ちながら走れることでしょう。

 速く走りたい、あるいは長く走りたいという方は、この夏ぜひ「裸足ランニング」に取り組んでみてはいかがでしょうか。秋以降のレースシーズンで、何かしら効果を実感できるはずです。

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著者プロフィール

中学生の頃から陸上競技を始め、大学では十種競技選手として活動。引退後、約7年のブランクを経て2011年6月よりランニングを開始。同年にハーフマラソン、フルマラソン、翌年には100kmのウルトラマラソンやトライアスロン(オリンピック・ディスタンス)も完走。沖縄本島1周マラソンなどを始め、今では“超長距離”レースにも数多く出場している。また“トウモロコシ”や“アザラシ帽子“をトレードマークに、仮装マラソンも楽しむ。ランニングブログも不定期更新中。趣味と過去の経験を活かし、現在は東京都葛飾区内にある中学校の陸上部にて、外部コーチとして指導も行っている

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