ソフトバンクを支える名ワキ役の仕事ぶり 頑張っているのは主軸だけじゃない!

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スタメン出場で必死のアピール

限られた出場機会の中で牧原が5月15日のオリックス戦のヒーローに。セーフティースクイズで先制点を生むと、7回には決勝の犠飛を放ち、ソフトバンクが2対1で勝利 【写真=BBM】

 5月15日のオリックス戦(ほっと神戸)。開幕から主に「1番・ライト」を務めてきた福田の状態が落ちると、本来は二遊間が本職の牧原大成が今季初めて「9番・ライト」でスタメン起用された。チームが連敗中で迎えたその試合で、牧原は絶妙なセーフティースクイズで先制点を生み出し、連敗ストップに貢献。「ああいうプレーは常にイメージして練習している」。自らの武器を磨き、それをグラウンドで発揮することが、出場チャンスを増やすことをワキ役陣は理解している。牧原は、交流戦は全18試合中の12試合にセカンドでスタメン出場。内外野を守れる「ユーティリティー性」で、過去に2度の盗塁王にも輝いた本多雄一らを脅かしていることが、ただでさえ強いチームをさらに活性化している。

 5月7日の東北楽天戦(ヤフオクドーム)では、その牧原や本多らとセカンドの座を争う高田知季が、同点に追いつかれた直後の7回1死二、三塁で福山博之から決勝適時打を放ち、お立ち台に上がった。「必死に食らいついた。レギュラーを取る気でやっている。武器は守備だけど、打たないと試合には出られない」。安定感ある守備力が持ち味だが、強力打線で出場機会をつかむために、シーズン中でも連日のアーリーワークで打撃力の向上を目指している。

 昨季、その高田に10試合で遊撃のスタメン出場を奪われたのが、いまや日本を代表する遊撃手に成長した今宮健太だ。その高い守備力は球界の誰もが認めるところではあるが、昨季の打率は2割2分8厘。守備だけではレギュラーの座も安泰でないことは昨季の経験から痛いほど理解しているだけに、オフから徹底的な打撃向上に取り組んだ。開幕から苦しんだものの、1番に定着した6月の月間打率は3割5分1厘。同29日の千葉ロッテ戦(ヤフオクドーム)では、延長10回に劇的なサヨナラ打も放った。誰にでも出場チャンスがある工藤采配の下で、ワキ役同士が互いの活躍に刺激を受け、それがさらなる活躍へとつながっている。

主力の練習量が若手にも好影響

6月30日のロッテ戦で672日ぶりの先発勝利を挙げた岩崎(右) 【写真=BBM】

 投手陣もそれは同じ。昨季チーム勝ち頭の武田翔太、メジャーから復帰した和田毅ら主力先発陣は順調に白星を重ねているが、今季は昨季までにはなかったワキ役の活躍が目立つ。5月27日のロッテ戦(QVCマリン)、開幕ローテからは外れた4年目の東浜巨が、相手エース・涌井秀章との投げ合いを8回無失点で制した。その勢いに乗り、チームは交流戦前最終カードのロッテ戦で3連勝。「あの東浜のピッチングが大きかった」と、工藤監督も前半戦のヤマ場と言っても過言ではない大一番での好投を称えた。

 6月30日のロッテ戦(ヤフオクドーム)では、岩崎翔が、今季初先発のマウンドで7回途中1失点と好投し672日ぶりの先発勝利。7月7日のオリックス戦(京セラドーム)では、5年ぶりの完封勝利を飾った。

「自分より上の人に勝つには練習しかない」と、特に若手には厳しく口にする工藤監督は、東浜や岩崎らを相手に、昨秋のキャンプから徹底的に体力強化を直接指導し、ローテ入りした現在でも週3日のトレーニングを彼らに課している。

 就任1年目で日本一に輝いた昨季、自チームのことを「主力があれだけ練習するんだから強いよ」と振り返った工藤監督。内川、松田宣浩らの主力がキャンプ中から日が暮れるまで質量ともに濃い練習をするだけに、ワキ役や2軍の若手陣は必然的にさらに練習量が増える。その練習量に支えられ、出場機会を与えられたワキ役陣はキラリと光る活躍を見せ、それがほかの選手への刺激となり、さらなる活躍を呼ぶ。それが、V3を狙う工藤ホークスの最大の強さと言えるだろう。

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