広島・中崎翔太が目指す真のクローザー 25年ぶりの歓喜へ勝利の方程式が機能

ベースボール・タイムズ

身に付けた威圧感とコントロール

守護神として黒田(左)とともに25年ぶりのリーグ優勝へ赤ヘル投手陣を支える中崎 【写真は共同】

 グラウンド外では温和な性格で、優しい顔立ちから前田健太などから「癒し系」と称されていた中崎だが、この年あたりから、マウンド上で相手を睨みつけるような厳しい表情が見られるようになった。
「14年の途中に、当時の野村(謙二郎)監督からマウンド上での態度を指導されていた。『厳しいものを出していけ』と。そこから彼も、グッと勝負に入り込んでいけるようになって、明らかに変わった」と山内氏は当時のエピソードを明かす。現在ではすっかりトレードマークとして定着している見事な“あごひげ”も、相手打者を威嚇するという意味で、この時からの流れによるものだろう。

 昨季はシーズン途中からクローザーを任され、リーグ3位の69試合に登板し、29セーブをマーク。この年から1軍投手コーチとなった畝龍実コーチが、気温が影響する血行障害の影響を考え、春先は登板間隔を考慮した中継ぎからスタートしたが、当初抑えに期待されたヒースの不調もあり、5月からは再びクローザーを任された。そして、気温が上がり、指の不安もなくなったオールスター以降はフル回転の活躍で、自己最高の成績を残した。

 背番号が21に変更となった今季は、ブルペンの主軸としての期待に見事に応え、7月3日現在で35試合に登板して1勝3敗16セーブ。防御率は1.75と1点台をキープしている。山内氏は「昨年の途中あたりから、特にコントロールが良くなった。右打者へのアウトコース、インコースとコーナーへの真っ直ぐが、非常にいいところに決まっている。スピードも147、8キロは出るので、他チームのクローザーと比べても遜色のない存在になった」と、その成長ぶりを評価する。

まだまだ伸びしろある23歳

 今季は3度のサヨナラ負けを喫するなど、まだまだ不安定な部分もあるが、高卒6年目、23歳の右腕には、まだまだ伸びしろがある。山内氏は「落ちるボールを、もう少し使えるようになれば。今、投げているフォークボールを精度良く、もっと使えるようになれば、いいクローザーになる」とさらなる期待を寄せる。畝投手コーチも「気持ちの強さや性格を考えても、リリーフ、抑えは適任だと思う。持ち球を確率良く、しっかり投げきれるようになれば、将来的に絶対的な守護神になれる可能性は十分にある」と期待は大きい。

 かつての広島の黄金期、1979、80年の連続日本一を達成したチームで絶対的守護神として君臨していた江夏豊氏は、「優勝を知らない男が、本当の意味でストッパーと言えるのだろうか!?」という言葉を残している。25年ぶりのリーグ優勝が現実味を帯びてきた今季、中崎翔太には、その「真のクローザー」になれる資格がある。

(文・大久保泰伸/ベースボール・タイムズ)

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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