世界最終予選から始まる強化の道 バスケ男子代表が10年ぶりの国際舞台へ

小永吉陽子

東京五輪から開催国枠が復活するも……

昨年FIBAのバウマン事務総長は、「バスケットボールが発展するための強い基盤を築いてほしい」と日本への期待を述べている 【スポーツナビ】

 17年度からの新競技システムについて注目すべきは、五輪出場権の獲得方法。これまではアジア選手権等の大陸予選で争っていたが、次回20年の東京五輪からはW杯を経由して獲得する仕組みに変更になる(のちに説明)。さらには、東京五輪の「開催国枠がある」とFIBAのレギュレーションに明記されたことだろう。(※1)

 バスケットボールの場合、12年のロンドン五輪から、開催国の自動出場枠は無条件で与えられていたわけではなく、FIBAの中央理事会が決定する仕組みになっていた。12年のロンドン大会(イギリス)と16年のリオ大会(ブラジル)も開催国枠が与えられたのは開催前年のこと。開催国が自動出場権を獲得した場合、世界最終予選での五輪出場枠数が4から3枠に減少することが明記されており、イギリスもブラジルも開催国として出場が決まったことで、世界最終予選枠が今回のように3枠になったというわけだ。

 そして重要なことは、イギリスとブラジルは簡単に開催国として出場権を得たわけではないという点だ。ヨーロッパの弱小国だったイギリスは、男女ともに11年のヨーロッパ選手権で奮闘し、将来に向けてのバスケットボール発展計画を立て、それらが認められて出場権を獲得した。ブラジルの場合は実力的には問題がなかったが、協会が負債を抱えていたことが障害となり、負債の返済計画が認められたことで出場権を得ている。

 今回の新システム競技は開催国枠があることを明記しているとはいえ、出場可否はこれまで同様、FIBAの承認によることもあわせて明記されている。つまり、「開催国枠はあるが出場は決定していない」状態であり、FIBAからの承認を得るためには、イギリスやブラジル同様に課題が科せられるか、国際大会の成績が評価の対象となる可能性がある。いずれにせよ日本は、「どんな大会も無駄にせず、本気で挑まなければ先にはつながっていかない」(長谷川HC)立場だ。

 14年12月、日本がFIBAから制裁を受けた際に来日したFIBA事務総長のパトリック・バウマンは、「日本は2020年に向けて、そして将来を見据えて、バスケットボールが発展するための強い基盤を築いてほしい」と訴えている。たった12カ国しか出場できない五輪においては、実力、経済、バスケの発展において、世界の強豪と競い合えるだけの基盤が整ってこそ、開催国にふさわしいとFIBAは考えているのだ。

当面の目標は19年のW杯に出場すること

長谷川HCは世界最終予選を「世界への挑戦の第一歩」と位置づけた 【スポーツナビ】

 では、東京五輪の開催国枠を確実なものとするためには、どのような強化をすべきだろうか。

 17年からの新システムでFIBAが目玉としているのは「W杯」である。サッカーW杯と同年開催だった会期を1年ずらし19年開催にして注目度を高め、1年半かけてホーム&アウェイで予選を行うことで自国のファンに代表活動をアピール。また、先に述べたように、五輪チケットの獲得をW杯経由にしたことで、本大会への熱を高めようとしている。こうした大改革を施したことからも、W杯を世界ナンバーワン決定戦にしたいFIBAの意向は明らかである。日本は自力で五輪出場にチャレンジできるW杯こそ、第一に目指さなければならない。

 日本がW杯(10年までは世界選手権)に出たのは開催国だった06年。自力での出場は1998年のギリシャ大会までさかのぼらなくてはならない。これまではアジアに3枠しか出場権がなかったため、日本にとっては遠い大会だった。だが次回からは大会規模が32チームに拡大されたことでアジア・オセオニアは7枠となり、なおかつ、開催国である中国が出場権を持っていることから、アジアにとってはチャンスが一気に広がったといえる。

 しかし、出場枠が拡大したからといって悠長に構えてはいられない。次回からアジア勢はW杯常連国であるオセアニア勢と予選を戦うことになったのも大きな変更点であり、現時点で格上のオーストラリアとニュージーランドが出場権を獲得すると仮定すれば、残るは5枠。日本は昨年のアジア選手権で18年ぶりにベスト4入りしたが、それまでは5位〜10位と低迷していたことからすれば、今後もライバルたちとしのぎを削っていくことに変わりはない。

 また日本の場合、重要なのはW杯だけではない。今年の9月にはこれまでアジアカップから名称変更となる「アジアチャレンジ」が開催され、来年にはアジア選手権が4年に一度の「アジアカップ」へと形を変えるが、これらの大会も評価の対象になることを考えれば、何一つとして疎かにはできない。すべてのチャレンジは20年へとつながっているのだ。

 長谷川HCは10年ぶりの世界舞台となるセルビア決戦を「世界への挑戦の第一歩」だと位置づける。リオ行きの切符を目指すためにも、次期五輪ホスト国としても、本気の挑戦と成長が問われる戦いが今から始まる。

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著者プロフィール

スポーツライター。『月刊バスケットボール』『HOOP』編集部を経て、2002年よりフリーランスの記者となる。日本代表・トップリーグ・高校生・中学生などオールジャンルにわたってバスケットボールの現場を駆け回り、取材、執筆、本作りまでを手掛ける。

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