昨今話題の新魔球をOBが解説 ナックルカーブとワンシーム、特徴は?

ベースボール・タイムズ

ありえない?変化球ワンシーム

 

(撮影・編集:ベースボール・タイムズ)

今季は独特のワンシームを使い、打たせて取る投球を目指す菅野 【写真は共同】

  続いて、2010年にダルビッシュ有(当時北海道日本ハム、現レンジャーズ)が公表してから知られるようになった新球種『ワンシーム』。ボールの縫い目に指をかけない、または一本の縫い目を人差し指と中指で挟むように握り、ストレートと同じように腕を振る。
 
「ボールの回転を考えたらワンシームはあり得ない」と佐野氏は言うが、わずかな回転軸のズレと空気抵抗によって打者の手元でわずかに変化させる。

「空振りを取るというよりもボールをちょっと動かして、ちょっと沈んで、ボールの頭を打ってもらってゴロを(打たせる)というのがワンシームの使い方」と前田氏。今季は巨人の菅野智之が使い始めたことで再注目されているが、「彼の場合はもともとコントロールがいいから、ちょっとでも動かしたらゴロになる」と佐野氏。ワンシームの特性を考えた上で、前田氏も「コントロールが良いピッチャーが使うべきボール」と訴えた。

変化球の使い方が対照的な両氏

 変化球という観点において、今回解説した前田、佐野の両氏は対照的だ。「プロの打者を抑えるためにはいろんなボールが必要だった」と毎年のように新たな球種を習得し、最終的にストレートの他にシュート、カーブ、スライダー、カットボール、チェンジアップ、ナックルと“七色の変化球”を操った前田氏に対し、「ドラフトの時の紹介に『シュートがすごい』って書かれてたけど、それまで一回も投げたことがなかった。だから必死に練習したよ」と笑う佐野氏は、結局はシュートの完全習得には至らず、ストレートとスライダーの2球種のみだった。
 
 だが、それでも佐野氏が1軍のセットアッパーとして結果を出せたのは、内外角へのコントロールの良さと、「1球ごとにボールの握り方を微妙に変えたりしてボールを動かしていた」と細かな工夫があったからだろう。

「いくらいい変化球を持っていても、ストライクゾーンに投げられるコントロールがないと意味がない」との言葉は核心を突いている。

 その一方で、打者を黙らせる“魔球”に憧れる気持ちは誰もが持っている。「伊良部(秀輝)さんのフォークボールはすごかった。カーブで言えば今中慎二、スライダーで言えば伊藤智仁ですね」と前田氏。佐野氏は「フォークと言えば、やっぱり野茂(英雄)。普通のフォークは無回転で落ちるのに、野茂のフォークは回転してた。途中まで真っ直ぐと同じボールの回転をしてるのに急にストンって落ちる。キャッチボールをするのも怖かった」と懐かしむ。
 
 時代は変化し、流行は移り変わる。今回の『ナックルカーブ』、『ワンシーム』に続き、5年後、10年後になれば、また新たな変化球が騒がれているに違いない。新たな“魔球”を操る投手の出現に、今から期待したい。

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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