燕入りジェフンはギラギラした目の25歳 野生児は日本野球にハマるか?

室井昌也

もがき苦しんだマイナーの7年間

独立リーグでは気性の激しさから、死球の怒りが収まらず乱闘寸前になったことも… 【ストライク・ゾーン】

 NPB入りする外国人登録の韓国人野手としては8人目※となるジェフン。中でも代表的な選手では李大浩(元福岡ソフトバンクなど)、李承ヨプ(元巨人など)、金泰均(元千葉ロッテ)がいる。彼らは韓国リーグで実績を残し、確固たる地位を築いて日本にやってきた韓国の英雄だ。一方のジェフンは韓国人ではあるが韓国のプロ経験はない。ジェフンにあえて肩書をつけるなら「韓国人野手」の前に「マイナーリーグ出身の」という一言が必要になる。

 また前出の韓国人選手たちはアマ時代から続く韓国特有の上下関係の中でチームワークを培ってきたが、ジェフンはマイナーリーグで7年間、個々のサバイバルレースの中で過ごしてきた。この点もこれまで来日してきた韓国人選手と同じカテゴリーでは語れないところだ。ジェフンがアメリカでもがき苦しみ続けた経験は、これまで来日した韓国人選手にはない、ふてぶてしさやギラギラした視線に表れている。それはジェフンと6年間、カブス傘下でともにプレーしてきた投手、イ・デウン(千葉ロッテ)にも見られるところだ。

気性が激しく、あわや乱闘も…

 そんな野性的なジェフンの姿が27日の高知戦では見られた。初回に二塁打を放った後の3回裏、2打席目の2球目にジェフンは背中に死球を受けた。この投球に対し、ジェフンは投手に向けて大きなジェスチャーで怒りをあらわにし、その回が終了してもいら立ちが収まらなかった。攻守交代時に高知ベンチに向かって、Fから始まる4文字英語を叫び、これに両軍は一触即発。駒居鉄平三塁ベースコーチがジェフンの口を抑え自軍に連れ戻し、ようやく事態が収まるという場面があった。ジェフンの気性激しさが見られた瞬間だった。

 ジェフンはヤクルト入りについて、「うれしい。ヤクルトでも徳島で残した成績と同じような結果を出せるように一生懸命頑張りたい」と話した。また中島監督はNPBに旅立つジェフンに向けてこうエールを送った。

「肩と足は勝負できる。あとは本人の一番自信があるという打撃で、しっかりと“ハマって欲しい”」

 誰もが認める高い身体能力とこれまでの韓国人選手にはない野性味を持つ25歳のジェフン。その強い個性が中島監督の言葉通り、日本プロ野球に「ハマる」か「ハマらないか」。その一点がジェフンの成否を左右する。

※李鍾範(元中日)、李承ヨプ(元巨人など)、李炳圭(元中日)、金泰均(元千葉ロッテ)、李ボム浩(元福岡ソフトバンク)、李大浩(元福岡ソフトバンクなど)、宋相勲(元中日)、ジェフン(ヤクルト)

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著者プロフィール

1972年東京生まれ。「韓国プロ野球の伝え手」として、2004年から著書『韓国プロ野球観戦ガイド&選手名鑑』を毎年発行。韓国では2006年からスポーツ朝鮮のコラムニストとして韓国語でコラムを担当し、その他、取材成果や韓国球界とのつながりはメディアや日本の球団などでも反映されている。また編著書『沖縄の路線バス おでかけガイドブック』は2023年4月に「第9回沖縄書店大賞・沖縄部門大賞」を受賞した。ストライク・ゾーン代表。

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