マエケンの喜び、週刊イガワくんの苦闘 カネシゲタカシの『ぷぷぷぷプロ野球』

カネシゲタカシ

ヤンキースの漫画を描いていたはずが

 しかし、いくらメジャーの情報が気軽に手に入る時代だからといって、全部が全部とはいきません。たとえばテレビや新聞では日本人選手の個人成績を伝えることに重点を置きますし、ネットはネットで、やはりある程度英語を使いこなせなければ、現地発の濃密なメジャー情報を手に入れることは難しいでしょう。

 これで苦労したのが、ほかならぬ僕です。

 僕はかつてこのスポーツナビで『週刊イガワくん』という2コマ漫画を2007年から11年にかけて連載していました。タイトルで分かる通り、阪神タイガースからニューヨーク・ヤンキースに移籍した井川慶投手を主人公にしたギャグ漫画です。

 しかし、その肝心の井川さんが米国でのキャリアの大半をマイナーリーグで過ごしたため、彼の情報を手に入れるのに当時ずいぶん苦労したのです。

2008年5月のイガワくん。この試合がヤンキースでの最後の先発登板に 【イラスト:カネシゲタカシ】

 ヤンキースでの登板があった最初の2年間こそニュース報道も多かったのですが、彼のマイナー暮らしが長くなるにつれて、どんどんそれが減少。連載後半に至っては、情報の大半を「2ちゃんねるの井川慶スレッド」でなんとか手に入れるという綱渡り状態だったのです。

 名も無き井川ファンの皆さんがURLを書き込んでくださるマイナーリーグ関連サイト。これらを英語に四苦八苦しながら読み解くことはなかなか骨の折れる作業でした。しかし、こうでもしなければ、井川慶が今なにをやっているのか、いつ、どこで、どんなデザインのユニフォームで投げているのか、よくわからなかったのです。

 だってAAAのスクラントンにいたはずが、翌週にはAAのトレントンで投げてたりするのですから。そもそもトレントンって何処ですか。僕はヤンキースの漫画を描いてたはずなのに……。

2011年8月のイガワくん。この頃には連載までも週刊から隔週に降格 【イラスト:カネシゲタカシ】

 掲示板で、ときに「イガワくんの作者、よく続けてんな」などの書き込みに励まされたりしつつ必死で情報を探したことは、今では良い思い出です。

名刺代わりの一発といえば

 話を前田健太のホームランに戻しましょう。

「メジャーのデビュー戦で本塁打を打った日本人選手」ということで、同じく鮮烈な記憶として残っているのは04年の松井稼頭央でしょう。こちらはニューヨーク・メッツの先頭打者として、メジャー史上初となる「新人による、開幕戦・初球・初打席・初本塁打」という、まさに初物尽くしの一発を放ちました。

 そして松井秀喜も。ヤンキースに移籍した03年、メジャー初本塁打を本拠地開幕戦で、しかも満塁ホームランで決めるという千両役者っぷり。今回のマエケンといい、日本人メジャーリーガーには名刺代わりの一発がよく似合うようです。

 では、突然ですがここでクイズです。メジャーリーグで日本人初のホームランを打った選手といえば誰?

 正解は、野茂英雄(ドジャース)。

 1998年4月28日のミルウォーキー・ブリュワーズ戦で打ちました。ちなみに野茂はメジャー通算でも4本のホームランを記録しています。

「日本人初のホームラン? イチローだっけ、ゴジラだっけ?」と思わせる引っ掛け問題ですので、覚えておきましょう。

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著者プロフィール

1975年生まれの漫画家・コラムニスト。大阪府出身。『週刊少年ジャンプ』(集英社)にてデビュー。現在は『週刊アサヒ芸能』(徳間書店)等に連載を持つほか、テレビ・ラジオ・トークイベントに出演するなど活動範囲を拡大中。元よしもと芸人。著書・共著は『みんなの あるあるプロ野球』(講談社)、『野球大喜利 ザ・グレート』(徳間書店)、『ベイスたん』(KADOKAWA)など。

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