大躍進を遂げた白井健三の衝撃 風雲急を告げるリオ五輪体操代表争い

椎名桂子

ますます混戦予想のNHK杯

白井との得点差はわずか0.300。NHK杯で再逆転の可能性を残す加藤 【末永裕樹】

 昨年は故障で思うような練習ができない時期が長かった加藤も、今大会では安定感のある演技を見せ、復活を印象づけた。最終種目の鉄棒は15.000と決して悪い得点ではなかったが、白井のゆかの得点とは1.500の差があり、5種目目終了時にあった1.200差を引っくり返されてしまった。
 大会後の囲み取材で「若手の勢いはすごい」とわずか3歳下の白井を指して言った加藤。とはいえ、白井との得点差はわずか0.300。NHK杯で再逆転の可能性は十分にある。

 さらには、同点4位に入った神本、齊藤も白井との差は0.450。神本は今大会の平行棒で15.900のハイスコアを出し、日本のウィークポイントと言われるつり輪でも15.250を出している。齊藤もH難度の離れ技「ブレットシュナイダー」を決め、鉄棒ではトップとなる16.000をマーク、跳馬でも15.500でトップの得点をとっている。日本代表の有力候補と言える。

 また、今大会ではあん馬、跳馬とミスが出て出遅れながらも、得意種目の平行棒、鉄棒で16点台を出し、順位を6位まであげてきた田中も、白井との得点差は、0.650。本来の力を出せれば、6種目で90点超が可能な選手だけに、NHK杯の出来次第では、まだまだ代表入りの可能性は十分にある。

 もちろん、今回の結果で一躍、代表候補の最右翼に躍り出た白井も、「今回の結果にはびっくりしているけど、演技の内容は、いつも練習ではこのくらいにできているので、びっくりはしていない」と胸を張った。「今回はたまたま勝てただけで上位の選手とはまだまだDスコアにしてもまったく勝てないので」と言うが、それでも「個人総合2位」という結果を経験したことは、白井の成長に弾みをつけそうだ。

スペシャリスト枠にも影響か

 リオ五輪の男子日本代表枠は「5」。すでに1つは内村に内定し、オールラウンダーからはあと1人が選ばれる。

 そして、残る3人は6月4〜5日に行われる全日本種目別選手権を終えてから、先に決まっている2名の代表選手との組み合わせによって、最もチーム貢献度の高くなる選手が選ばれることになる。今大会前まで、白井は、この3選手の中には確実に入ってくるだろうと目されていたが、もしも、白井がNHK杯を終えても2位に入ることになると、チーム貢献度の高くなる選手のタイプも違ってくると考えられる。
 オールラウンダー枠が「内村、白井」となった場合は、ゆか、跳馬での2人の得点力が高いため、ゆかや跳馬が得意な選手にとっては狭き門となりそうだ。

 ただでさえ混戦必至だった男子体操の代表レースは、「白井健三」というオールラウンダーとしては大穴の大躍進によって、ますます風雲急を告げている。5月5日のNHK杯、6月4〜5日の全日本種目別選手権まで、固唾(かたず)をのんで見守ることになりそうだ。

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著者プロフィール

1961年、熊本県生まれ。駒澤大学文学部卒業。出産後、主に育児雑誌・女性誌を中心にフリーライターとして活動。1998年より新体操の魅力に引き込まれ、日本のチャイルドからトップまでを見つめ続ける。2002年には新体操応援サイトを開設、2007年には100万アクセスを記録。2004年よりスポーツナビで新体操関係のニュース、コラムを執筆。 新体操の魅力を伝えるチャンスを常に求め続けている。

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