リオ五輪柔道代表の選考理由 実績重視で「金4〜6個」が取れる陣容

平野貴也

最終選考会で敗れた選手に厳しい指摘も

全日本選抜体重別選手権・男子66キロ級の準決勝で敗れた海老沼らに対し、井上監督は「勝つ地力がなければ五輪では勝てない」と厳しかった 【写真は共同】

 ただし、敗れて代表に選出されるという形になった選手が多かったという事実に関しては、厳しい指摘も下した。

 井上監督は「誰が金メダルを取れる可能性が高いのかという見方で選出した。プレッシャーというものは、五輪では今回以上のものがある。気を引き締め直さないといけないと感じられる大会となった。監督として感情的になってはいけないと思ったが、これほど(代表選手)選考において苦しい思いをしたのは、4年間で初めて。代表を逃した者の思いを思うと、心苦しい」と、最後に評価を下げながら選ばれた選手が多いことに苦言を呈した。「いかに100パーセントの力で臨めるように調整するかが大事だが、現実的に(必ず100パーセントというの)は無理。70〜80パーセントでも勝つことが大事。今大会は良い例。1番手の選手は五輪が(意識の中に)ちらつくし、モチベーションのピークは、2番手以降の選手とは違う。それでも、その中で勝つ地力がなければ五輪では勝てない。緊張状態の中でも勝てる準備をすることが必要」と課題を挙げた。

 井上監督の発言からは、長期の安定感と大一番での勝負強さの2点を大きく評価したことが伺い知れた。井上監督は、有力候補の中でしっかりと最終選考を勝ち抜いた男子81キロ級の永瀬貴規、男子73キロ級の大野将平(ともに旭化成)を高く評価。「全階級でメダル、金メダルを狙える選手が出そろったが、今大会では新たな危機感を覚えた。この2日間では、本調子でなく、気持ちも高くなくても永瀬と大野が優勝した。力を持っている証拠。彼らを中心に前回はなかった金メダルを目指したい」と話した。

代表落ちの選手は他大会でアピール不足

 最終選考会を勝ったが選ばれなかった選手に関しては、他の大会でのアピールが不足したことに言及。男子66キロ級で代表となった海老沼に準決勝で1本勝ちを収めるなど、充実した勝ち方で最終選考会を優勝した阿部一二三(日本体育大学)については、2020年東京五輪に向けた有力候補としての期待を示しつつ「素晴らしい試合を見せたが、選考は講道館杯から始まっている。阿部選手は講道館杯の準決勝で有効を取られて3位になり(その次の選考対象大会である)グランドスラム東京大会に出場できず、欧州での大会の日本代表にも選ばれなかったというところで、自ずと戦線から離脱した」と言い切った。

 女子でも78キロ級で代表となった梅木真美(環太平洋大学)が最終選考の準決勝で敗退したのに対し、次点候補の佐藤瑠香(コマツ)が優勝したが、女子代表の南條充寿監督は「選考レースの中で総合的に見たときに(昨年の)世界選手権の優勝が大きな材料になったことは事実」と直近の成績が芳しくないことは認めながらも、梅木の実績を評価。一方、最終選考会の決勝で有力候補同士の対決を制した女子70キロ級の田知本遥(ALSOK)については「新井(千鶴=三井住友海上)選手と代表レースでもつれる形になったが、最終選考会のすべての試合でポイントを挙げて勝利したところに執念を感じた」と選考レースを戦い切っての勝利を高く評価した。

評価を証明するリオの舞台

 最終選考会という表現から、世間には代表決定戦の意味合いが強く伝わるが、実際にはよほど実績で並ばない限り、最終選考会での評価逆転は難しいというのが現実だった。

 山下強化委員長は、最終選考会終了後の委員会を一部報道陣に公開したことについて「期待している選手に厳しい試合内容が多く、異論も出た。本当にこんな選手が戦えるのかという意見も出た。不満も多かったが、比較的厳しい、活発な意見が出て来たことは良かったと思う。(委員が)かなり真剣に事前の準備をして来ていた。選手にとっては、一生に一度のチャンス。その運命を握るわけだから、みんなで真剣に議論できたことは良かった。(公開した委員会の内容に)一定の評価はしたい」と話し、最終的には男女両監督が推した候補者がすべて選出されたことを明かした。

 選考レースを戦い続け、その中で実績を残した者が臨むことになったリオの舞台では、評価を証明する戦いが期待される。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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