らしくない戦い方が続くバルセロナ アウェー戦で見せた専守防衛の姿勢

守備面で混乱に陥ったバルセロナ

ピケの欠場がバルセロナに与えた影響は大きかった 【写真:なかしまだいすけ/アフロ】

 考えられる要因は1つではない。まず先述した3試合を欠場したピケの不在。また大声で指示を出して最終ラインを統率するハビエル・マスチェラーノは、脱税問題で有罪判決を受けたばかりで、マラガ戦で先発したトーマス・フェルメーレンの出来もひどかった。

 とはいえ、マラガやアスレティック・ビルバオがとりわけアウェーでは毎回苦戦を強いられる相手であるということを考慮しても、バルセロナがここまで守備面で大混乱に陥ることは滅多にない。

 選手たちから見て取れた迷いに加えて、これらの試合では必要以上に守備ラインを下げ、いつものようにボールを保持しながら動かすのではなく、相手にボールを持たせた上で跳ね返す戦い方に傾倒している印象も受けた。

 サン・マメスでのアスレティック・ビルバオ戦では、驚くべきことにセルヒオ・ブスケッツやアンドレス・イニエスタがマルク=アンドレ・テアシュテーゲンのすぐ近くまで下がってボールを受け、うまくマークを外した選手、もしくは前線で良い状況にある選手を探してパスをつなぐのではなく、単純にロングボールを蹴り出してマイボールを放棄するシーンが目に付いた。

 だが、後方からの組み立てがスムーズにできなければ、前線に良い形でボールを届けることはできない。結果としてメッシは中盤に下がりボールをさばくといったプレーが増え、前線での存在感が薄れることになった。それでもこれまで結果を出せずにいたムニル・エル・ハダディが重要なゴールを決めることで、何とか帳尻を合わせることはできたのだが。

ここ数試合の傾向は一時的なものだと考えたいが……

バルセロナは今後もMSNを中心とした輝かしい攻撃を見せてくれるだろうか? 【写真:ロイター/アフロ】

 いずれにせよ、バルセロナが今後もアウェー戦のたびに、このようなバルセロナらしからぬ戦い方に傾倒していくとは考えにくい。ただシーズン終盤の山場が近づいている今、こうした傾向が1つの懸念材料となっていることは確かだ。そうでなくとも、これまでバルセロナに成功をもたらしてきたフットボールが異なるものであることは、世界中のファンが理解しているはずだ。

 願わくば、ここ数試合のバルセロナに見られた傾向は、フットボールにおいてはしばしば起こり得る一時的な現象に過ぎないものだと考えたい。

 きっと今後もバルセロナはMSN(メッシ、ルイス・スアレス、ネイマールで形成される3トップ)を中心とした輝かしい攻撃によって、われわれを魅了し続けてくれるはずなのだ、と。

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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