「ラグビーを変えた」パナソニックがV3 戦略面で上回り、東芝との激闘を制す
ラストプレーで東芝の逆転ゴールが外れる
決まれば逆転のゴールキック直前に、成功を祈る東芝ベンチ 【斉藤健仁】
そのまま時計は経過、パナソニックはボールキープする作戦を貫いていたが、残り4秒。パナソニックのFL劉永男を、東芝のCTB増田慶介、リチャード・カフイの2人で抱え込んでモールを形成し、見事にターンオーバーに成功。ラストプレーは東芝の自陣10m、右スクラムからの攻撃だった。
東芝はカフイが、前に詰めてきた相手のピーターセンをターンしてかわして、ステインにパス。ステインが大きくゲインして、ゴール前に迫る。続く攻撃でカフイは、オープンサイドにキックし、バウンドしたボールを途中出場の7人制日本代表候補のWTB豊島翔平が見事にキャッチし、そのまま右中間に飛び込んでトライ! 27対26と1点差となる。
優勝の行方は、東芝・ステインの右足にゆだねられた。タッチラインから5mの場所から蹴られた放物線はポスト左にそれていき、ノーサイド。パナソニックフィフティーンは両手を突き上げたり、泣き崩れたり、そして互いに抱き合ったりと、3連覇を達成した喜びを爆発させた。「リクシル杯」のMVPは、3試合でDG1本も含めて25本のキックを100%成功させたパナソニックのパーカーが選出された。
「ラグビーのすべての要素が詰まっていた」
ロビー・ディーンズ監督(右)は「東芝も素晴らしい戦いを見せた」と賛辞を送った 【斉藤健仁】
惜しくも敗れた東芝の冨岡監督は「日本ラグビーが大きく変わった年の大一番にふさわしい戦いだった。パナソニックが素晴らしかった」と勝者を称えつつ、ロスタイムのトライに関して「ちょっとストーリーとしては弱い。つないで真ん中にトライを挙げていれば勝っていた。必然ではない取り方だったかな。そこに壁はある。力の差があった」と唇をかみしめた。ただ、「積み重ねた時間は優勝しても申し分ない準備をしてくれた。東芝の歴史は終わりではない。また強いチームにチャレンジしていきたい」と来季を見据えた。
満員の観客にパナソニック・田中は涙
優勝が決まって喜びを爆発させるパナソニックの選手たち 【斉藤健仁】
試合は予想通り、トップリーグ史上に残る名勝負となった。パナソニックはほかの15チームより、ピッチに立った選手それぞれが、今、何をしなければいけないかをわかっていたと思う。最後のトライのシーンにも数人の選手がしっかり戻り、ゴールキックのシーンでも3人ほどがプレッシャーに走っている。激闘続きのトップリーグの中で、「青き王者」は唯一無敗でシーズンを駆け抜けた。