蹴ることが大好きな2人の小野対談 小野伸二(サッカー)×小野大輔(フットサル)

Q&A Sports Interview

伸二「誰かを驚かせるようなプレーこそが、人を魅了する」

結果だけでなく、人を楽しませることにもこだわってきたという2人 【(C)Link Sports】

大輔 監督や見ている人に横に出せとか、セーフティに行けとか言われたりすることも、もちろんある。でも選手としては人が無理だと思うところを通してなんぼなわけで、ゴールに結び付けることが自分の存在意義を示すことにつながるんだよ。もちろんそこに固執するわけじゃないけど、自分がゴールに最短だと思って、通せる可能性があると判断したから、チャレンジする。それが実際に通った時は見ている人も驚いて、楽しいと感じるだろうし、逆に通らなければ周りにいろいろ言われることになるけど、セーフティなことばかり続けていて何が楽しいのか、と俺は思う。

伸二 リスクを冒して、それが通れば周りは評価するけど、通らなければただのミスになってしまう。分かっている人はいいところを狙ったと理解してくれるんだけれど、そうでない人は疑問に思うだけ。ただ、それを通した時の快感は他の人では味わえない。上から見ている誰かを驚かせるようなプレーこそが、人を魅了することができるんだよ。少なくとも俺はそういうものを心掛けてやってきた。

大輔 オーストラリア(ウェスタン・シドニー・ワンダラーズ。2012年9月〜2シーズン在籍)でやっていた時、左足でループシュートを決めていたけど、あれは狙ったの?

伸二 まぁ、たまたまだよね。

大輔 ここまで話しておいてそれかよ(笑)。

伸二 入る時は入るんだよ。こっちも入ると思って打ってるからね。だから何の力みもないし。

大輔 でもそういうプレーを続けてきたから、日本に帰国する前のホーム最後の試合で、伸二のために花火が上げられたりしたわけだよね(※)。魅了された選手に対しては言葉や国も関係なく、盛大にたたえ、表現してくれるんだなと感じたよ。こんな選手、今までいなかったんじゃないかな。

※小野がウェスタン・シドニー・ワンダラーズで最後に出場した2014年4月5日の試合では、ゴール裏のサポーターから大きなフラッグが掲げられ、背番号21にちなんで前半21分に21発の花火が打ち上げられた。

大輔「子供と一緒にやることは刺激になる」

大輔(中央)も伸二もスクールなどで子供たちとプレーする機会が多い 【(C)Link Sports】

大輔 俺も伸二もスクールをやったりする機会があるけど、子供と一緒にやることは刺激になるよね。

伸二 これはよく言うんだけれど、子供に“教える”感覚じゃないんだよ。僕らは今もプロとしてやっていて、教えることに関してはある意味、まだ素人だから。今まで自分がやってきたことを振り返って、プロを目指す子供たちにとってこの時期に大切なことを“伝える”という感覚でいる。

大輔 俺も一緒。子供たちには現役選手のプレーの感覚を肌で感じてもらい、それを今度は自分で友達とやる時にチャレンジしたり、イメージを持ってやってくれたりしたら、俺らと一緒にやったことが価値のあるものになるんじゃないかな。

 基本的な技術以外の戦術とか、そういう細かいことを大人が並べたところで、子供の頃の俺はそんなこと全然気にしなかった。もしかしたら大人が変な先入見とか価値観を押し付けて、子供たちがやりたいプレーができなくなっていることもあるんじゃないかな。

伸二 子供のストロングポイントだけを伸ばすことが大切だね。ウイークポイントなんて関係ない。この子は何を考え、どういうプレーをしたいのか。それが大事なことだと思う。もちろんただ楽しいことだけをやるんじゃダメ。基礎的な部分を徹底してやって身に付けることで、そこを基盤としていろいろなことができるようになっていくわけ。

 今の子供たちは良くも悪くも、さまざまな情報を手に入れることができる。海外のこととかね。ただ、俺の根底にある一番大事なことは、「止めて、蹴る」というサッカーにおいて最も重要とされる部分。今はそれをしっかりやらずに、ステップを飛び越えて格好良いことばかりやってしまう人がいる。でも正直そんなの必要ない。まずは基礎の部分を徹底してやらないといけないよ。

伸二「1日でも長くサッカーをやり続けたい」

伸二は「1日でも長くサッカーをやり続けたい」とこれからの目標を語った 【(C)Link Sports】

大輔 だいぶ真面目な話になっちゃったな(笑)。飲みにいくと、こんな感じでサッカーの話ばかりしているんだよね。最後になるけど、伸二のこれからの目標を教えて。

伸二 1日でも長くサッカーをやり続けたい。俺はサッカーをやっている時が一番幸せだから、その時間を少しでも長くしたい。

大輔 俺はさっきも言ったように、これからも選手としてリスクがあるプレーにチャレンジしていきたい。その欲がなくなっている時はどこかで諦めている気がするから。自分にしかできないプレーを体が続く限り、楽しみながらやっていきたいね。

小野伸二(サッカー)

コンサドーレ札幌所属、背番号44。ポジションはMF。1979年9月27日生まれ、静岡県出身。175センチ、76キロ。1998年に浦和レッズに加入。同年Jリーグ新人王、ベストイレブンを受賞。以降、フェイエノールト(オランダ)、ボーフム(ドイツ)、清水エスパルス、ウェスタン・シドニー・ワンダラーズ(オーストラリア)を経て、2014年にコンサドーレ札幌に移籍。サッカー日本代表としては3大会連続でワールドカップ出場を果たしている。

小野大輔(フットサル)

湘南ベルマーレフットサルクラブ所属、背番号18。ポジションはピヴォ。177センチ、67キロ。1980年1月25日生まれ、東京都出身。国内だけでなく、イタリア、スペインなどのフットサルクラブでプレーした後、Fリーグ・バルドラール浦安に加入。その後、府中アスレティックを経て、2012年に湘南ベルマーレに移籍。フットサル日本代表としてW杯に2回出場している。

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