リオ目指す“タックル王子”の奮闘 女子の陰で苦しむ日本の男子レスリング
全ては男子レスリング復興のために
男子レスリングの双肩を担う“タックル王子” 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
西口は生活の中での最優先権をレスリングにしなければいけないと力説した。
「いまの世代はレスリングもそうだけど、生活も大切というタイプが多い。だったらレスリングが一番大切なんだというところから教えないと。グレコは大晦日から1月8日まで正月返上で合宿をします。これだけやっているんだから勝たないとバカだろう。勝たなければ何のためにやっているんだというところまで持っていきたい」
そうした指導陣の士気は選手たちにも十分に伝わっているのだろう。高谷は世界選手権での反省を踏まえ、今大会では得意のタックルにつなげるための組み手を新たなテクニックとして取り入れ、試合でも使うようになったと話す。
「本当にちょっとしたことなんですけど、相手と組む時には必ず内から組むように心がけました。それで、(決勝で対戦した)嶋田大育選手(青森県協会)は彼の得意技でもあるタックルに入ることができなかったんだと思います」
それに加え、ステップにも工夫が施されていた。
「世界選手権では僕が前に出たところで逆にタックルに入られるというパターンだった。企業秘密なのであまり言いたくないけど、そのために今回はわざと一歩下がる戦術をとりました。『下がる=悪い』という考えではダメ。一歩下がって、相手が出てきたところを押さえる。ちょっとした駆け引きなんですけど、世界のレスリングの流れはつねに変化していますからね」
タックル王子の笑顔の先に、男子復興はあるのか。