最後のチャレンジは「カポエイラ」 「松原渓のスポーツ百景」

松原渓

【Getty Images】

ブラジル伝統のダンス×音楽×格闘技

カポイエラは究極の全身運動 【松原渓】

 最終回のテーマをどのスポーツにするかは、意外にもあっさりと決まった。当初、この競技に対して抱いていたイメージは、親しみやすいスポーツというよりは、ジャッキー・チェンやブルース・リーなど「異次元の格闘家によるアクション・格闘技」。私が挑むにはあまりにも高いハードルで、無謀だと思っていた。

 それは「カポエイラ」。ダンスと音楽と格闘技の要素が混ざり合ったブラジルの伝統芸で、ブラジルとユネスコの無形文化遺産にも登録されている。高いハードルにあえて挑戦しようと思ったのは、街中で何度かカポエイラ教室の看板を見かけ、初心者向けや体験クラスがあることを知ったからだ。もう一つは、「自分で自分の限界を決めつけない」と、初心に戻る意味もこめて。2016年のリオデジャネイロ五輪には取材で行きたいと思っているし、その前勉強として、ブラジルの文化に触れる良い絶好の機会にもなる。

 カポエイラでは組み手(ジョーゴ)を行い、音楽に合わせて対面する相手と、お互いの技を尊重し合いながら、即興の技をかみ合わせる。元は護身術とも言われるように、格闘の要素もあるものの、相手を倒すためというよりはそういった即興性を楽しむもので、ブラジルの人はゲーム感覚で楽しむのだという。

 インターネットで調べれば、ハイレベルな組み手の動画がたくさん見られる。切れ味鋭い回し蹴り、上半身を大きく使ったダイナミックな動きなど、カポエイラはまさに“究極の全身運動”だ。自分の身体を楽器のように操る個人競技の面白さもあり、組み手で相手との即興性を楽しんで見せる団体競技としての面白さもある。

仕事帰りにも気軽に参加できる

通うとレベルに応じてハンコがもらえる 【松原渓】

 カポエイラの起源は諸説あり、奥深い。有力な説では、16世紀頃の植民地時代にアフリカから連行された奴隷たちが、支配者に対抗する手段として発展させたと言われる。また、奴隷同士のけんかは厳罰の対象とされていたため、ダンスのように見せていたため、格闘技とダンスの両方の要素を兼ね備えたそう。

 ちなみに、私が最初にカポエイラの存在を知ったのはゲーム『鉄拳3』。学生時代に流行したこのゲームで、お気に入りだった「エディ・ゴルド」というキャラクターがカポエイラの使い手だった。ボタンを連打すると、鮮やかにカポエイラの技が繰り出される。華麗に踊りながら、相手との間合いを計り、構える隙さえ与えない。「こんな格闘技があるんだ」と、興味をひかれた。

 今回体験を申し込んだのは、渋谷、新宿、専属など都内数カ所でスクールを展開する「カポエィラ・テンポ」。初心者向け、一般向け、アクロバットなどいくつかのクラスがあり、私は「女性のためのフィットネス・カポエィラ」というクラスに参加した。毎週火曜日夜18:30からの1時間で、体験料金は1500円。持ち物は動きやすい上下(裸足のため上履きは不要)とタオルと飲み物だけ。仕事帰りにも気軽に参加できるのが嬉しい。

 レッスン当日、教室には20代〜30代の女性が10人来て、教室は賑やかに。定期的に通っている女性がほとんどだった。インストラクターは、ダンサーやモデルとしても活躍する齋藤和宏先生。「仮面ライダーになりたくて上京した」という、甘いルックスを兼ね備えた若きカポエィリスタだ。見事に引き締まった身体と、長い手足を自在に操るカポエイラは一見の価値あり、だ。

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著者プロフィール

サッカー番組のアシスタントMCを経て、現在はBSフジにて『INAC TV』オフィシャルキャスターを務める。2008年より、スポーツライターとしての活動もスタート。日テレ・ベレーザの下部組織であるメニーナのセレクションを受けたことがある。『キャプテン翼』の原作者である高橋陽一先生が監督を務める女子芸能人フットサルチーム「南葛シューターズ」にて現在もプレー。父親の影響で、幼少時から登山、クロスカントリー、サイクリングなど、アウトドア体験が豊富。「Yahoo!ニュース個人」(http://bylines.news.yahoo.co.jp/matsubarakei/)でも連載中

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