ロッテ清田育宏が飛躍を遂げた要因 指揮官も認めるメンタルの変化
きっかけは元同僚の言葉
「打たないと……」と結果を出すことに焦っていた清田だが、今季は「自分のことを一生懸命やっておけばいい」という考え方に変化した 【写真提供:千葉ロッテマリーンズ】
「昨年までは、打たなきゃいけない、打てなかったらまた代えられるのかな……と、マイナスに考えていました。2軍から1軍に上がると、最初は『打ってやろう』という気持ちが出る。でも、少し時間が経つと『打たないと、また2軍に戻されるんじゃないか』と考えてしまうんです。でも、活躍している選手に『打てなかったらどうしよう』と考えて打席に入っている選手はいない。みんな堂々と打席に入っている。早く自分もそうならないといけないと思っていました」
そんな清田の考え方が、今年から変わった。
「今年は『自分のことを一生懸命やっておけばいい』と考えるようになった。自信を持って、自分のためにやろう。それがチームの勝利につながるんだ、と。今は自信を持って打席に入れている。それが強みだと思います」
これには、きっかけがあった。昨年12月のこと。清田は、ロッテから戦力外通告を受けた荻野忠寛(現・日立製作所)と都内で食事をする機会があった。その際、他愛もない話をする中で、荻野からこんな言葉をもらった。
「キヨ、お前はどっしりしとけよ。ベンチにいるときは『オレを使わないの?』という気持ちでいればいい。『試合に出たときはやってやる』という気持ちを常に持っておけよ」
清田は、その時のことを振り返る。
「それは、分かっていたことでした。自分でもそうしなければいけないと思っていた。それを荻野さんから言ってもらって、『まわりの人もそう思ってくれているんだ』と思えた。すごく心に響いた言葉でした」
打点にこだわり、チームを勝利へ導く
清田が打点を挙げれば勝利の可能性は高まる。5年ぶりの日本一へ向け、清田がチームをけん引する 【写真提供:千葉ロッテマリーンズ】
「数字で一番気にしたいのは、打点です。打点は、チームの勝利に必ずつながるものですからね。今は3番で起用してもらっているので、チャンスで打席が回ってくることが多い。そこで僕が打つのと打たないのとでは、試合の流れやチームの勢いが変わってくる。チャンスで打って、打点をたくさん挙げられる打者になりたいですね」
8月2日までに、清田は28試合で打点を挙げている。そのうちの7割を超える、20試合でチームが勝っている。清田の言葉は、データでも裏付けられている。
ペナントレースは、最終コーナーにさしかかろうとしている。ロッテは、7月24日の楽天戦から7連勝するなど、後半戦開始からの10試合を7勝3敗と巻き返している。7月31日には3位に浮上した。シーズンのラストスパートに向けて、清田は言う。
「まずは、チームが勝たないと面白くない。勝つために、自分が何をしなければいけないかを考えながらやっていきたい。毎試合、シーズン開幕戦のような気持ちで臨んで緊張感を持ちつつ、試合を楽しめればいいですね」
ロッテは05年、10年と5年ごとに日本一となっている。そのことから、今年は「5年に一度のゴールデンイヤー」と言われている。それが現実となるか――。そのカギは、清田のバットが握っている。