国内現役最高齢、81歳の柔術家 気持ちに衰えなし――“挑む”男たち

長谷川亮

大会最高齢51歳のデビュー戦

大会最高齢だった51歳の篠田義造さん、今回がデビュー戦だった 【長谷川亮】

 51歳になる篠田義造さんは今大会が初参戦。柔術の大会も初めてならば、今回が格闘技で初めての試合となった。

「格闘技は見るのはいろいろ見ていたんですけど、自分で出るのは初めてです。柔術は知り合いがやっていて、そこへ顔を出してるうちに引き込まれた感じです(笑)。最初は大変かなと思っていたんですけど、“少しずつでも付いていけるよう頑張りたい”って変わってきて。やっているうちに楽しくなってきました」

職場の後輩3人も関東から応援に駆け付けた 【長谷川亮】

 昨年末に大会出場を決意してからは親交のあるキックボクサー・森井洋介選手にアドバイスを仰ぎ、早朝に時間を作って走り、20キロ近くの減量に成功。試合出場にこぎ着けた。

「これでほんとに試合も出て、一応みんなと同じになれたかなって。みんなと同じになりたいなっていうところもありました」

 そんな篠田さんの熱意と姿勢に打たれ、職場の後輩3人も篠田さんとともに関東から応援に駆け付けた。試合は階級別はエントリーがなく優勝認定、巴戦となった無差別級は用意した得意技に持ち込むことができず2試合とも一本負けとなり3位に。大会最高齢で挑んだデビュー戦は苦いものとなってしまったが、「もっと体力をつけて、勝つまで頑張ります」と語り、さっそくまた走り込みを再開している。
 残念な結果には終わったが、戦うことで示した“挑む”姿勢は後輩だけでなく、今年受験を迎える息子さんにもきっと伝わったことだろう。

81歳の達人「やることが楽しみ」

国内現役柔術家で最高齢と言われている中島佐金吾さん、81歳 【長谷川亮】

 そして前回12月の大会でエキシビションマッチを行い、今回は観戦と応援に駆け付けた81歳の中島佐金吾さん。大会は朝から夜8時近くまでのロングランとなったが、中島さんは最後まで最前列で熱視線を送っていた。

「知り合いも何人か出ていたんですけど、やっぱりなかなか思う通りにいかないですよね(苦笑)」

「やることが楽しみ」と語る中島さんは多くの柔術家の目標となっている 【長谷川亮】

 居合と合気道を30年以上経験してきた中島さんは、居合の指導を行っていた体育館でブラジリアン柔術の大会が行われることを知り、誘いを受け2002年1月、観戦に訪れる。

「体の使い方が自由に動けるし、なかなかいいなぁと思って。人を投げて首を絞めたりするけど、やっつけようとかそういう気持ちは私はサラサラなくて(笑)。だけど健康にいいなと思って」

 現在も所属するパラエストラ北九州の後藤富一代表を紹介された中島さんは、さっそく通い始める。そして実際に始めた当時の感想を次のように言う。

「これはいいけど、自分が思ったようにはいかないから、ちょっと柔道の技も身に着けないといけないなと思って、今度はすぐ柔道も習いました(笑)。勝てるもんではないと思って」

 柔道にも練習へ通い、中学生相手に試合を行い初段を取得。このとき70歳ぐらいであったという。パラエストラ北九州で週に2回の練習に加え、居合の稽古など、中島さんは今もほぼ毎日何かしらの練習・稽古を行っている。

「最近は体のことがあるので頻繁にはやっていないですが、1日1回はスパーをします。中島さんの得意技は上から攻めることで、パスガードと抑え込んでからの圧力がすごくて、ちょっと人と違う感じの圧力があります。白帯の人とかは全く動けなくなります。合気道やいろんな武術をやられているので、体の使い方が中島さんなりのやり方があるみたいです」(パラエストラ北九州・後藤代表)

 昨年12月のDUMAU九州ではトラスト柔術アカデミー代表を務める生田誠選手と44歳差のエキシビションを行い、得意とする抑え込みからアームロックで一本勝ち。満場の拍手を浴びた。



「(今後の目標は)別になくて(笑)。帯とかは私の場合はあんまり関係ないです。やることが楽しみで。気持ちいいもんでね。死ぬまでやります(笑)」

 5月大会の後は、黒帯で階級別と無差別を制した“シュレック”関根秀樹選手をはじめとした多くの関係者に囲まれた。国内現役柔術家で最高齢と言われ、今も柔術を楽しむ中島さんは多くの柔術家の目標となっている。

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著者プロフィール

病弱だった幼少期にプロレスファンとなり、格闘技ファンを経て2002年に格闘技雑誌編集部入りし、05年からフリーライターに。『スポーツナビ』にはそのころから執筆。病床で何度も読み返したため、『プロレススーパースター列伝』は大体暗記。趣味は下手の横好きでキックボクシングとブラジリアン柔術

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