運命共同体となりつつあるバスケ界に期待 “bjリーグの声”に対する世間の反応

大島和人

タスクフォースに対する対立軸

川淵チェアマンは5千人以上収容のホームアリーナの確保を新リーグ参入の条件としている 【スポーツナビ】

 とはいえ5千人以上収容のホームアリーナの確保、巡業方式の否定と言った川淵構想が、地方を軽んじているということではないだろう。青森ワッツの下山保則社長が口にした“地方切り捨て”という批判に対して、川淵チェアマンはこう返す。「みんな地方で頑張っていて、5千人のアリーナを作っている。盛岡だってそうなのに、なぜ切り捨てと言うのか? 一般受けするからそう言っているんであって、そういう言われ方をするのは不愉快そのもの」(川淵チェアマン)。

 今もbjリーグを引っ張っているのは沖縄、秋田と言った“地方”のチーム。地上波のテレビ局、県紙で大きく扱ってもらえることは、大都市圏のチームにないアドバンテージでもある。もちろん地方が盛り上がらなければ、新リーグの成功もない。

 またそのような対立軸はあったとしても、それを理由に構想が振り出しに戻るということはないだろう。4月3日の時点では47チーム中24チームが新リーグ(一般社団法人ジャパンプロフェッショナルバスケットボールリーグ)への入会届を出している。なお「所属リーグに退会届を提出済みであること」が申込の条件となっていたため、彼らはもう完全に次のステージに飛び出したということだ。川淵チェアマンはこのような動きについて「順調だね。退団届を出すようなところで、ひと悶着あるかもしれないなという不安があった。思っていたほどガタガタしなかった」と安堵の表情を見せる。

一丸となりつつあるバスケファミリー

 4月3日の時点では、5チームある企業チームからの参加届は出ていない。しかし川淵チェアマンは「大体皆さん参加される方向に進んでいます」と述べている。タスクフォースのメンバーで、実務面を取り仕切る境田正樹弁護士も「今日来ているチームとは別の18チームから『今は準備中で、今日は来られない』という連絡が来ている」と説明する。つまり少なくとも24に18を加えた「42チーム」は、参加に向けた準備を進めているということ。4月28日に開催される第4回タスクフォースまでには、参加表明が出そろうことになる。そして1部16チーム、2部20チームをめどに、チームの振り分けも行われていく。

 タスクフォースの最終ミーティングは5月下旬。もう2カ月を切り、議論は最終段階に入った。方向性も定まり、確かな成果が出つつある。もちろん大切なのはそこからの審査、運営だ。川淵チェアマンは「7月いっぱいにはチームの参加が全部決まりますし、方向性も決まります。今年8月くらいに理事、委員会、その他のしっかりした組織になる」とタイムスケジュールを説明する。

 昨年11月27日のFIBAによる制裁処分、今年1月28日の第1回タスクフォースから、短期間で日本バスケは一変した。「プロかアマか」「ドラフトとサラリーキャップをどうするか」という大枠の議論は一気に片付き、議論は具体的な方向に進んでいる。もちろん課題や不安がすべて消えたということではない。しかし大切なのは、bjリーグも含めた47チームがこの議論に参加し、当事者性を持ち、運命共同体としてつながったことだ。ガバナンスは統治する側、統治される側の双方が合って成り立つものだが、この3カ月足らずでそこの断絶は随分と狭まった。バスケ界が意見の相違や、難題に見舞われることは今後もあるだろう。しかし一体となって議論し、決まったらそれに従うというベースがあれば、壁を乗り越えて行けるはずだ。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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