国枝慎吾がトップで走り続けられる理由 挑戦の人生「勝ち続けることが仕事」

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「国枝のプレー」を見て何か感じてもらえたら

「車いすでもこのくらいできる」というのを見せていくことが大事だと国枝は訴える 【写真:伊藤真吾/アフロスポーツ】

――国枝選手がトップを走り続けていることもあって、女子では上地結衣選手(エイベックス)がランキング1位といったように、日本の車いすテニスは現在、世界的に見てもトップを走っていると思います。日本が活躍できている理由をどう見ていますか?

 僕が09年にプロへ転向して、今では何人かの選手がプロとして活動しています。他国は、国からの支援が厚く、強化がうまくいっているケースもあります。ただ、日本は国からの支援というより、企業の支援によって強化が進んでいます。結果さえ出せば支援は得られるので、プロ化の面では海外に劣らず、日本も進んできている。これによって、プロとして生活していく選手が増え、それがプロ意識を高め、結果につながっているのだと思います。

――最近は錦織圭選手の活躍や、東京五輪・パラリンピックの決定で、車いすテニスの注目度も上がっています。

(注目度の高まりを)感じる部分はありますね。メディアの取材依頼も多くなりましたし、錦織君がつくってくれたテニスの流れもあると思います。

 東京パラリンピックを目指したいという子どもが多くなりましたね。僕のテニスクラブにも問い合わせが多くて、小学生、中学生、高校生の車いすの子どもたちが車いすテニスを始めるようになりました。車いすテニスが多くの方に認知されるようになって競技人口が増えてきたのかなと思いますね。2020年が近づいてきて、あと5年。僕自身もどれだけパラリンピックを盛り上げられるか、協力できるかがこれから大事になると思います。

――国枝選手の活躍も、車いすテニスプレーヤー増加の要因だと思われますが、後輩にどういった姿勢を見せていきたいと考えていますか?

 車いすでもこのくらいできるんだぞ、というのを見せていくのが大事だと思います。また、後輩たちだけでなく、多くの方々に「国枝のプレー」を見てもらいたいですね。それで何か感じてもらえたらと思います。

 まずはテニスを楽しんでもらいたいです。僕ももともとエンジョイ(テニス)から入り、競技に転向しました。競技になったら楽しむだけでなく、勝つために練習するといった厳しさがあります。やはり結果が欲しくなるし、それが出ないと悩みますので、プレッシャーをしっかり受け止められる人じゃないと厳しいです。競技の厳しさは競技になった時に学んでもらえたらいいですね。

リオで3連覇、そして東京へ

――国枝選手はすでにリオデジャネイロパラリンピック出場を決めていますが、東京パラリンピック前最後のパラリンピックということで、これまでと違った大会になりそうでしょうか?

 現時点では金メダル最有力の位置にいるのは確かですし、それを来年まで続け、第1シードでリオに乗り込むことが目標です。また、そのリオでシングルス3連覇を果たすのも今の目標です。

――東京パラリンピックが決まり、引退時期を伸ばされましたが、それは東京での4連覇を意識した上だったのでしょうか?

 4連覇というよりも、東京でやりたいなという気持ちですね。そこでやらなきゃ後悔するだろうし、来年のリオで優勝したら、また4連覇という気持ちになるだろうと思いますので、東京での4連覇は目指したいですね。

――今後の目標を聞かせてください。

 昨年もすべてのグランドスラムのシングルスを取るのが目標だったので、今年も同じでグランドスラムをすべて取りたいと思っています。(僕は)勝ち続けることが仕事だと思うので、それが目標ですね。

 リオパラリンピックに向けても、準備の年になるので、何かビッグチェンジできるのであれば積極的に取り入れて、自分自身のテニスをさらに進化させる年にしたいと思ってます。

東北の子どもたちに生きる力を教えてもらった

東北の子どもたちに「挑戦し続ける人生を」とエールを送る 【スポーツナビ】

――今回、東日本大震災で被災した子どもたちの継続した自立支援を目的としたプロジェクト「Support Our Kids」に賛同され、チャリティーオークションにも出品していますが、どんな思いで参加されたのですか?

 僕も震災後1年が経った頃、東北に行ったことがあります。訪問した小学校では、子供たちのご両親が亡くなった話などを(事前に)聞き、どんな話をしたらいいか悩んでいたのですが、会場に入った瞬間、子供たちの元気なお出迎えがありました。つらい体験があったにもかかわらずです。そんな子どもたちと出会って、人間の持っている生きる力を感じました。

 僕も元気をもらうことで、「やってやるぞ」という気持ちになりましたね。訪問してそういった姿を目に焼きつけて、子どもたちに人間の強さを教えてもらったなという感じがしました。皆さんにもぜひ、東北の方々、子どもたちをサポートしてもらえたらと思います。

――東北の子どもたちへのメッセージをお願いします。

 僕が車いすになったのは、小学4年生の時、脊髄のガンでなんですね。生死の境に直面して車いすになった程度で良かったなと思いました。生きていれば楽しいこともたくさんあるし、僕も毎日充実しています。命さえあれば何も怖くないというか、一度きりの人生だから、何にでも挑戦していこうと思えてくる。逆に僕は、あの体験があったからこそ、人生に積極的になれているというところもあります。人生をもっと充実させるためには、挑戦し続ける人生を歩むことだと思います。みんなにもそれを意識してもらえたら最高ですね。

国枝慎吾プロフィール

 1984年2月21日、東京都出身。9歳の時、脊髄腫瘍により車いす生活に。11歳で車いすテニスを始めると、丸山弘道コーチの指導でめきめきと頭角を現す。2004年アテネパラリンピックでは斎田悟司選手とペアを組みダブルスで金メダルを獲得。06年10月には自身初となる世界ランキング1位に立ち、以降、この地位を守り続けている。4度の年間グランドスラム、08年北京パラリンピック、12年ロンドンパラリンピックとシングルス2連覇を達成している。

国枝選手も参加!『東日本復興支援チャリティ・オークション』

【リユース! ジャパン プロジェクト】

 東日本大震災の被災児童自立支援プロジェクト「Support Our Kids」と、リユースをみんなで広げることを目指す「リユース! ジャパン プロジェクト」が手を組み、チャリティ・オークションを3月9日より開催中。国枝選手のサイン入りラケットや、松井秀喜さん、浅田真央さん、松山英樹さん、AKB48のメンバーをはじめとする著名人のサイン入りグッズを多数出品。落札代金は子どもたちの海外ホームステイや被災地での支援活動の費用に充てられます。

http://reuse.yahoo.co.jp/archives/sok.html

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