制球ではない、阪神・藤浪の最大の課題 佐野慈紀氏「球の強さ、キレ向上を」

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マエケンとの自主トレで固まった意識

オフには広島・前田健太(右)らと自主トレを行った藤浪(左) 【写真は共同】

――広島・前田健太投手と自主トレをして、刺激を受けたそうですが、本人の意識は変わっていましたか?

 普段からわれわれ評論家にもいろいろな意見を求めてきますし、すごく勉強熱心です。何かを吸収しようとする意欲はあるでしょう。マエケンと一緒にやったことで、おぼろげだったことが、ある程度自分の中で固まって「チーム内の競争に勝とう」という意識が今年ははっきりしたのではないかと思います。

「開幕投手を目指す」という発言もありましたが、よく口にしていたのが、「自分はまだまだなんで」という言葉です。ただ、その後に必ず、「でも」「だから」と言って、自分をステップアップさせようという言葉を発します。実績を残しているメッセンジャー、能見(篤史)を乗り越えることでエースとして周囲が認めてくれる、という意識が強くなったという証拠だと思いますね。

――過去2年でローテ投手として成績は残していますが?

 本人としては物足りないでしょう。昨年は11勝ですが「もし後半バテていなければ最多勝争いに絡めたかもしれない」と言っていました。最多勝が13勝(メッセンジャー、中日・山井大介)で、あと2試合は勝てた試合もありましたからね。
 よく「勝ち負けは時の運」と言いますが、やはり優勝するには1つでも2つでも多く勝つ、特に先発投手が勝つのはチームにとって大事です。その意識はかなり強くなっているという気はします。

裏ローテから開幕して15勝を

――今季は「エースになってほしい」と阪神ファンは願っていると思います。

 注目度が高いので、表ローテーションよりは、裏ローテの初戦で投げるのがベストで4番手、5番手がいい気がします。やはり、まず勝ちをつけてあげたいです。勝ち星がつくことによって、自信がどんどん大きくなります。表ローテはどのチームもいい投手が投げます。そうなると、より力が入ってくるでしょう。ただ、現在の成長過程でいきなり、多かった球数がすぐに少なくなることはありません。だったら、4番手、5番手である程度は有利な投球ができる方がいいと思います。

 そこから前半戦うまく回っていけば、後半戦の優勝争いは表ローテでいいと思います。メッセンジャー、能見、岩田(稔)がいますが、このうち1人でも調子が悪い投手が出てきた時に入れればいいでしょう。

――前半戦で何勝くらい必要でしょうか?

 7、8勝はしていきたいですね。経験のあるメッセンジャー、能見は別ですが、藤浪のような若い投手にとって勝ち星が何よりです。ある程度、余裕が持てるポジションにいるのがベストかと思います。

 ただ、エースになるにはシーズンでの勝ち星15勝が目標となるでしょう。そのためにはまだまだ経験は足りないんじゃないかもしれないですね。

――今季、目指してほしい成績はどれくらいですか?

 常に15勝は目指さなければいけません。それを超えたら20勝です。防御率は昨年(3.53)より0.5は良くしてほしいですね。投球イニングは180が最低ライン。奪三振数は、後からついてくるものです。追い込んだら三振を取りにいってもいいですが、フルカウントから三振をとるのと、1ボール2ストライクから三振をとるのでは大きな違いです。無駄球は減らしてほしいですね。

(取材・構成:石橋達之/スポーツナビ)

佐野慈紀氏プロフィール

現役時代は近鉄などで中継ぎとして活躍した佐野慈紀氏 【スポーツナビ】

1968年4月30日生まれ。90年ドラフト3位で近鉄に入団。主に中継ぎとして活躍し、中日、米独立リーグ、オリックスなどでもプレー。振りかぶった際に帽子を飛ばす「必殺てかてか投法(ぴっかり)」で球場を湧かせた。現在は野球解説者として活動中。

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