今季ユナイテッドにけが人が続出した理由 プロが語る正しいプレシーズンの過ごし方
過酷な米国遠征で求められた全力プレー
2部練習は米国遠征中も何度か行われていた。ファン・ハール監督(中央)にアピールが必要な選手たちは必死に試合や練習をこなした 【写真:アフロ】
ファン・ハールは練習強度の高い監督として知られており、それが彼の指導者としての成功要因の一つになっている。だが、選手たちはファン・ハールの練習メソッドに慣れる必要があり、負担になった。例えば試合前日と2日前、ユナイテッドは11対11のフォーメーション練習をするのが慣例になっているが、ファン・ハールが来る前はけがを防ぐため接触プレーを制限していた。つまり50〜75%の力だ。しかし、ファン・ハールは100%の力を出すことを選手に要求した。
しかも選手というのは、新しく来た監督に対して積極的にアピールしようとするもの。夏の移籍市場で大型補強を繰り返すファン・ハールに対し、選手たちは必死になって練習やトレーニングマッチに取り組んだ。
必要だった練習強度と時間の調整
負傷の多いショーには練習強度と練習時間を個別に調整する必要があった 【Man Utd via Getty Images】
今季サウサンプトンから獲得したショーは8月13日にハムストリングを痛めた。この時、ファン・ハール監督は「ショーのけがには6つの原因がある。W杯に出たこと、米国遠征の時差ぼけ、十分な練習を積めなかったこと、彼がフィットしてなかったこと、米国遠征からイングランドに戻った日に試合に出たこと、自分が願っていた半分のトレーニングセッションしかできなかったことだ」と言った。
しかし、指導者は選手のけがに対し、自分に責はなかったのか問わなければならない。ファン・ハールは多くの“外的要因”にショーの負傷要因を求めているが、それは言い訳だ。サウサンプトン時代から負傷が多かったショーに対し、より個別のアプローチ(“インディビジュアル・ピリオダイゼーション”)を採るべきだった。
応用が利くコンディショニングの鉄則
ユナイテッドの負傷者続出は、コンディショニングの鉄則を知っていれば避けることができた 【写真:ロイター/アフロ】
フェルハイエンの講義を聴くと、我々の普段のサッカーシーンにさまざまな応用が利くことが分かる。W杯前、日本は指宿の1次合宿でかなりフィジカルを追い込んでから、米国の2次合宿に移ったが、後に指宿合宿は失敗だったと結論付ける報道も出ている。これも、“オフシーズンが短いプレシーズンの過ごし方”の鉄則、「コンディショニング=維持、フレッシュネス=疲労を除いてから向上」を知っていれば、避けることができた失敗である。
高校サッカーに当てはめても面白い。これから高校に進学する中学生にとって受験によるブランク、それまでU−15のレベルでサッカーをしていた子が、いきなりU−18のレベルでサッカーをすることになる環境の変化は、大きな負荷となる。春先は彼らにしっかり移行期を作ることが重要になってくるだろう。
※1月21日に予定されていたレイモンド・フェルハイエン氏の「フットボールブレイニング(サッカー心理学)」のセミナーは28日午後22時開催に変更されました。詳細は下記関連リンクの「『フットボールブレイニング(サッカー心理学)の原則』セミナー開催お知らせ」にて。