大迫、設楽兄弟らの活躍が生む相乗効果 ニューイヤー駅伝から始まる新たな戦い

折山淑美

設楽悠、先頭争いの後方で区間新の快走

Hondaの設楽悠太は10位でたすきを受け取ると一気に追走、区間記録を更新する活躍を見せた 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 そんな先頭の競り合いをはるか後ろから追いかけ、素晴らしい走りを見せたのがHondaの設楽悠だった。上位に入るためにはもう追いかけるしかない状況。「1区の出遅れが響いたけれど、そこは焦らずに自分の走りをしようと思っていたので。前半から突っ込むのが自分の走り方なので、そこは崩さずにいきました」と、最初の5キロを13分45秒で入った。

 距離表示が正確ではないと思える10キロでは27分50秒で通過と窪田に劣っていたが、「向かい風になっても沿道の応援で気持ちを高められました」とスピードを落とすことはなかった。そして今井が13年に出した区間記録を3秒更新する1時間02分47秒で走り切り、チーム順位を4位まで上げた。

 結局、区間賞獲得は設楽悠で、区間2位は1時間03分01秒で走ったトヨタ自動車九州の今井。窪田は1時間03分03秒で3位、設楽啓は1時間03分23秒で4位になり、村澤も1時間03分33秒で5位と続いた。この5人が昨年の区間賞(1時間03分35秒、トヨタ自動車の宮脇千博)のタイムを上回るというハイレベルな戦いになった。

先輩の意地と新人の勢いが繰り広げる戦いに注目

大迫、設楽兄弟らと同学年ながら、実業団選手としては先輩の宮脇は「彼らに負けてはいけない」と闘志を燃やす 【写真:伊藤真吾/アフロスポーツ】

 今後については、大迫と設楽兄弟がトラックで今夏に中国・北京で開催される世界選手権を狙う。一方の窪田は2月1日の別府大分毎日マラソンに出場する予定だが、「あまりマラソンとトラックを別に考えたことはない。マラソンを第一に考えつつ、トラックシーズンもしっかり走りたい」と話した。

 今大会はほかにも、服部翔大(Honda)が上り坂のある5区で区間5位とまずまずの走りを見せた。これらのルーキーの活躍が、先輩の選手にとって刺激になったのは確かだ。

 彼らと同い年ながら実業団選手としては先輩となるトヨタ自動車の宮脇は「窪田がいるという安心感で伸び伸びと調整できました」と苦笑する。宮脇は自身が区間記録を持つ3区を走って区間3位(13.6キロ、38分41秒)という結果。この後は「現在50パーセント程度」という体調を戻しながら、16年のリオデジャネイロ五輪をマラソンで目指すための体づくりをしたいと話す。「強い同期がいるから彼らに負けてはいけないという気持ちになりますね。その点では本当に恵まれていると思います」と笑顔も見せた。

 ルーキーたちが今回のレースで見せた力をさらに伸ばしていくためにも、彼らの頭を抑えるような強い上の世代の選手たちがいることも必要だ。そんな先輩ランナーたちの意地と、新人の勢い。それがこれからのロードやトラックシーズンで、どんな戦いを繰り広げられるかに注目したい。

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著者プロフィール

1953年1月26日長野県生まれ。神奈川大学工学部卒業後、『週刊プレイボーイ』『月刊プレイボーイ』『Number』『Sportiva』ほかで活躍中の「アマチュアスポーツ」専門ライター。著書『誰よりも遠くへ―原田雅彦と男達の熱き闘い―』(集英社)『高橋尚子 金メダルへの絆』(構成/日本文芸社)『船木和喜をK点まで運んだ3つの風』(学習研究社)『眠らないウサギ―井上康生の柔道一直線!』(創美社)『末続慎吾×高野進--栄光への助走 日本人でも世界と戦える! 』(集英社)『泳げ!北島ッ 金メダルまでの軌跡』(太田出版)ほか多数。

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