音楽を聞くためのヨガ公演!? つながりを感じる旅「シアターヨガ」

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音の聞こえ方が変わると、もっと心に響く

【提供:シアターヨガ】

 ウィルさんの曲と曲の間で綿本さんが言葉を紡ぎ、ステップごとに観客に働き掛けます。五感を研ぎ澄まし、身体を使いながら心を解きほぐしていく作業です。音の聞こえ方を変えるために。

ステップ1:皮膚全体で音を受け止める
座席に腰をおろしたまま、呼吸をしながら筋肉を伸ばしていきます。細胞の1つひとつが音に共鳴するように。
ステップ2:受け取った音を心の奥に招き入れる
ウィルさんの歌声を聞きながら、皮膚全体に浴びた音を自分の奥の方、一番深いところへ招き入れる意識を持ちます。

ステップ3:自分と周りのものを隔てている壁をこじあける
素直にありのままを受け取る、ありのままの自分を100%肯定します。成長する過程で作ってきた壁を取り払って、自分の心と向き合います。想像力を働かせて、子供のころの自分に出会うために、心の中の旅に出掛けます。

ヨガは音楽を聞くための土壌作り

「『シアターヨガ』が生まれたきっかけは偶然だった」と語る綿本さん 【スポーツナビDo】

 もともと、「シアターヨガ」が生まれたきっかけは偶然だったそう。2人がコラボレーションするようになたのは約3年前、当時はヨガスタジオでヨガマットを敷き、参加者がヨガのポーズをしながらウィルさんの歌を聞く、あるいは合間に歌が入るといったものでした。それが、昨年末の公演会場がコンサートホールだったことで、綿本さんにある考えが浮かんだといいます。

「公演当日の朝に、発想の転換がポンって起こったんです。ヨガをやるんではなくて、せっかくコンサートホールでやるのだから音楽を聞こうと。ウィルの音楽を中心に添えて。

 ヨガはウィルの音楽を聞くための土壌作りと言ったらいいのか、私はウィルの黒子としてMC的に間に入りながら、ヨガの要素をちりばめていこうと思ったんです。自分がMCで入ることによって、ウィルの曲を聞く旅先案内人であると同時に、参加者が自分の内側を旅していく、そのための旅先案内人になるというストーリーができました」

 ヨガというのはもともと、物事の受け止め方を変えていく手法だといいます。

「単に体を動かしたり、ポーズと言われるものをやるのがヨガではないんですね。音楽に限らず、何か出来事が起こった時、人はそれをポジティブにとらえることも、ネガティブにとらえることもできます。私たちの内外で起こる出来事をよりよくとらえていこうというのが、ヨガが目指すところです。

 そのためにポーズを使うのか、踊るのか、何かを読むのか――。音楽を使ってばかみたいにはしゃぐのもそうですし、手法は何でもいいんです。そこにたどり着くものを総称としてヨガと呼ぶんです。物事の捉え方、音に限定すると音の聞こえ方を変えていく力がヨガにはあるんですね」

つながり、一体感に包まれた会場

【提供:シアターヨガ】

 公演は終盤に差し掛かり、近くの人とパートナーになって、「つながる」という感覚を体験。1人が相手に背中を向け、もう1人は自分の手をこすって、暖めた手をパートナーの背中に置きます。お互いに、振動を通じて相手を感じるのです。心の中で相手にお礼を言い、パートナーと役割を交代。お互いの身体をたたき合い、パートナーとハイタッチしてセッションが終了しました。

 最後は、ウィルさんの曲に合わせて、みんなで綿本さんの行う動きをまねしてダンス。会場は、ライブ会場さながらに盛り上がりました。皆、童心に返ったように楽しそうに身体を動かしています。もともと、私たちは人とつながっていた、そのことにあらためて気づかせてくれるようでした。
「“シアターヨガ”は巻き込み参加型ですね。会場そのものが舞台になっちゃう。そう考えると、今までにない枠組みだと思います。舞台からの一歩通行ではなくて、観客席の皆を巻き込んでそれが舞台となり、自分の心も身体も舞台になるという」(綿本さん)

 参加者のさゆりさんは「すべて浄化され、リセットできた感じです。シアターヨガはヨガの要素がありつつ、普段のヨガに比べて、より一体感が感じられました。参加できて幸せです」と語っていました。

(取材・文:竹内桃子/スポーツナビ)

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