マルチプレーヤーを目指す大竹里歩 アジア大会の悔しさを糧に歩み続ける
細かなプレーが勝敗を分ける
「うまく回れば」効果を発する戦術だが、小さなミスやズレで綻びが生じる 【坂本清】
攻撃力でアピールしたい大竹も、この戦術に手応えを感じていたと言う。
「コンビが合わなかったり、『次はどこに入ればいいんだっけ?』と戸惑うこともありました。でも、うまく回れば攻撃枚数が増えるし、レシーブが乱れてもAクイックに絡めた時間差とか、センターからライトに開いて打ったりとか、今までやってきた形よりもバリエーションが多くなったと思います。高さがあるわけではないので、相手のブロックをどう抜けるかを考えたら、これから取り組んでいくべき方向性なんだろうな、と感じました」
チームがうまく機能することに加え、自身の攻撃力も上がれば今後につながる可能性も広がる。だが、大竹が言うように「うまく回れば」効果を発する戦術も、小さなミスやズレが生じると綻びが生じる。特に敗れた韓国、タイとの試合では、スパイクをブロックされる、相手のサーブにエースを崩されるといった直接的な失点ではなく、ラリーの後に安易なサーブミスをする、チャンスボールがチャンスにならず攻撃が組み立てられないなど、数字には残らない細かなプレーが勝敗の差になった。
「何でもないプレーなのに、焦ってしまってボールの処理が雑になる。もっと丁寧にプレーしなければいけなかったんですけど……」
骨折をしながらも強行出場
大竹は左手を負傷しながらも大会に出場。すべてを力に変えて、次なる目標へ向けて歩み続ける 【坂本清】
左手を何重にも巻いたテーピングで固定し、スパイクやブロック、サーブに関しては大きな支障がないように見られたが、オーバーパスはできない。経験豊富なタイや韓国の選手たちは、それを素早く見抜き、チャンスボールを返す時も大竹の頭上を狙った。
課題は冷静な判断力と技術力
「ノープレッシャーの中で行う1本のパスと、この1点をとったら勝ちだ、というプレッシャーがかかる局面での1本のパスは全然違う。そこでどれだけ正確なプレーができるかをアンダーカテゴリーに対してフィードバックしていかなければならないし、スパイクだけ、ブロックだけでレシーブやサーブ、セットはできません、という選手は必要ありません。すべての技術、判断力を備えたマルチプレーヤーを1人でも多く輩出したいし、しなければなりません」
チームとしても4位という結果は到底満足できるものではなく、シニアへつながるきっかけをつかみたかった大竹自身としても、後悔が残る大会となった。だが、それもすべて、次につながる糧でもある。
「このチーム、この大会で経験したことを生かして、全部のプレーに安定感のある選手になりたいです」
悔しさも、経験も、すべてを力に変えて。アジアから世界へ、次なる目標へ向けて歩み続ける。