歴史的大敗を王国はどう受け止めたのか? 指摘される連盟の体制や育成方法の改善

沢田啓明

レジェンドからは体制の見直しを望む声

国内報道では、敗因としてスコラーリ監督(写真)の選手起用失敗や連盟の運営、クラブに育成方法の見直しを求める声が挙がっている 【写真:ロイター/アフロ】

“キング”ペレは、「フットボールはびっくり箱だ。世界中の誰一人としてこんな結果を予想していなかった。でも、2018年大会(ロシア)でまた優勝を目指せばいい」と例によってあまり役に立たないコメントを発している。

 02年W杯日韓大会の優勝メンバーであるリバウドは、「このような結果は、説明不能。受け入れがたい落胆だ」と話し、元ブラジル代表センターバック(CB)で現在はテレビでサッカー解説を務めるエジーニョは、「大量失点を喫したのは、守備の選手だけの責任ではない。攻から守への切り替えが遅く、ボールを失ってから中盤で相手にパスをつながれたことが守備陣を難しい状況に追い込んだ」と指摘する。

 そして、「ブラジルサッカーは、構造的な問題を抱えている。ブラジルサッカー連盟の運営、クラブの下部組織における選手育成方法、クラブの経営手法など、多くの事柄を根本的に見直さなければならない」と提言する。

 02年大会の優勝メンバーで、今も現役を続けるMFジウベルト・シウバも、エジーニョに近い考えを持っている。「今、監督や選手からスケープゴートを見つけても、ほとんど意味はない。ブラジルサッカーの体制を見直すべきだ。近年、クラブも代表も目覚しい結果を残しているドイツが、ブラジルにとって良いお手本となるだろう」と語っている。

国内報道による敗因分析は?

 ドイツ戦の翌日以降、連日、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌などでセレソンの敗因を分析する作業が行なわれている。

 この中で、ほぼ一致して指摘されているのが、スコラーリ監督の選手起用の失敗。欠場したCBチアゴ・シウバの代わりにダンテを先発させたのはいいとして、故障で離脱したネイマールの代役としてベルナールを起用したのは「大失敗」と見なされている。「ドイツの強力な中盤に対抗するため、ブラジルも中盤の人数を増やし、ラミレスかパウリーニョを入れた3ボランチの4−3−3とするべきだった」というのである。

 また、「ネイマールを除くと、攻撃陣には頼りになる選手がいなかった。近年、ブラジルは攻撃的MFとセンターFWでタレントが出てこなくなっている」として、エジーニョが指摘したように、クラブが選手育成方法を改善することを求める意見も多い。

 次の代表監督を誰にするか、という議論も始まっている。当面、コリンチャンスを率いて12年クラブW杯王者となったアデノール・レオナルド・バッチ(愛称はチッチ、現在は所属クラブなし)が有力候補と見なされている。しかし、スポーツ専門チャンネル「ESPN」のアンケートでは、回答者の7割近くが外国人監督を望んでいる。

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著者プロフィール

1955年山口県生まれ。上智大学外国語学部仏語学科卒。3年間の会社勤めの後、サハラ砂漠の天然ガス・パイプライン敷設現場で仏語通訳に従事。その資金で1986年W杯メキシコ大会を現地観戦し、人生観が変わる。「日々、フットボールを呼吸し、咀嚼したい」と考え、同年末、ブラジル・サンパウロへ。フットボール・ジャーナリストとして日本の専門誌、新聞などへ寄稿。著書に「マラカナンの悲劇」(新潮社)、「情熱のブラジルサッカー」(平凡社新書)などがある。

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