敵将として対峙するレーブとクリンスマン 今も続く2人の友情、真剣勝負の結末は?

引き分けなら両国とも決勝T進出だが……

引き分けならともに決勝T進出が決まるが、両チームとも勝利を目指す。昨年の親善試合ではクリンスマン(写真)率いる米国が勝利しているが、今回はどうなるか 【写真:ロイター/アフロ】

 26日の木曜日、クリンスマンとレーブはともにスタジアムへと踏み入れ、世界最大のスポーツの祭典で敵同士として顔を合わせる。「たとえ相対する場所に立つとしても、ユルゲンと一緒にサイドラインに立つことをとても楽しみにしている」。対戦を数日後に控えた日曜日にそう語ったレーヴだが、「プレゼントはなしだ」と言い切った。

 友人同士の監督は、この数週間は連絡を取り合っていないことを強調した。そんなことは特別な話ではないと、レーブは最後に語った。「大会前だって、顔を合わせないことがあるのも普通のことだ」。またクリンスマンも、米国メディアにこう語っている。「われわれは良い友人だが、友情を深める電話をしている時間などない。今は仕事の最中なんだ」

 2人はともに、純粋にプロフェッショナルとして、この試合を行おうとしている。その点が強調される理由は、25日がある「記念日」であることに関係している。32年前、「ヒホンの恥辱」と呼ばれる事件が起きたのだ。

 このサッカー界の汚点のことを調べるのに、長い時間はかからないだろう。話は1982年のW杯にさかのぼる。グループ最終戦で対戦したオーストリアと西ドイツは、平和条約を締結していた。これにより西ドイツは1−0で勝利を収め、両チームとも2次リーグに進むこととなった。この結果、アルジェリアが大会から弾き出されることとなり、この合意に関する報道がなされた。今日で言うところの無気力試合――八百長である。

 ブラジルで行われている今大会で、そうしたシナリオが実現するとは考えられていない。たとえ引き分けることでドイツと米国が仲良く決勝トーナメントに進めるとしても、両チームはグループ首位通過のために勝利を求めてプレーすることだろう。「われわれは引き分けを目指して築いてきたチームではない」と、クリンスマンは硬い表情で話した。「われわれは常に勝利のために戦う。それがわれわれのスピリットだ。これはいずれの試合にも当てはまる」。ヒホンの恥辱はドイツの史実であり、米国の歴史ではない。98年からカリフォルニアで暮らすドイツ人は、そう断言した。

 同じ意見は、ドイツのキャンプ地からも聞こえてくる。「悪魔でさえも、われわれが引き分け狙いで戦わないことは知っている」。レーブのアシスタントであるハンス・フリックはそう話した。代表選手のDFマッツ・フンメルスも、こう付け加えている。

「そんなことはフェアじゃないからね」

親善試合では米国に軍配

 ドイツサッカー連盟は、こうしたアンフェアな取りまとめに関連づけられることを喜んではいない。ただし、ドイツと米国の間にある実績は記しておくべきだろう。昨年の6月、レーブ率いるドイツ代表には、国内で大きな批判が寄せられた。米国へ遠征した際、ワシントンでクリンスマン率いる米国に3−4で敗れたのだ。

 さらに13年の6月にはいなかった人物が、今はクリンスマンのそばにいる。代表選手時代に指導を受けたベルティ・フォクツが、クリンスマンの新たなアドバイザーとなっているのだ。元上司の国際経験が恩恵をもたらすことを、クリンスマンは期待している。フォクツこそは、ドイツに直近のビッグタイトルをもたらした監督である。とはいっても20年近くさかのぼるのだが、96年に欧州選手権を制覇している。つまり、3人の偉大なドイツ人監督が、米国と彼らの「ディー・マンシャフト」(ドイツ代表の愛称)が対戦する試合のサイドラインに並び立つのだ。

 06年の夏、ドイツ代表の物語は、クリンスマンとレーブを今も強く結びつけている。だが、ブラジルW杯では、最後に喜べるのはどちらか1人になるのか、あるいはまたも2人になるのか……。

 この一戦がそれぞれの国の、また2人の指揮官の間の新たな物語のプロローグになるのか、エピローグになるのかは、もうすぐ分かる。

(翻訳:杉山孝)

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著者プロフィール

フランソワ・デュシャト 1986年生まれ。世界最大級のサッカーサイト「Goal.com」でドイツ語版の編集長を務め、13年からドイツで有数の発行部数を誇る「WAZ」紙のサイト(http://www.derwesten.de/)でドイツ西部のサッカークラブを担当する。過去には音楽の取材もしていた。ツイッターアカウントは@Duchateau。自身のサイトはwww.francoisduchateau.net。 ダビド・ニーンハウス 1978年生まれ。20年以上にわたり、ルール地方のサッカークラブに焦点を当て、ブンデスリーガの取材を続ける。09年からは「WAZ」紙のサイト(http://www.derwesten.de/)で記者を務める。ツイッターアカウントは@ruhrpoet。自身のサイトはwww.david-nienhaus.de。

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