米メディアの露出は『Wie Win!』 史上初の男女同一コース開催の全米OP

宮下幸恵

男子はカイマー、女子はウィーが全米制覇

史上初、2週連続同一コースで行われた全米OPを一般紙『USA TODAY』はどう扱ったのか!? 右はウィーの全米女子OP優勝を報じた23日付のスポーツ面トップ、左は全米OPのカイマー優勝を報じた16日付のスポーツ面トップ 【宮下幸恵】

 ゴルファーナンバーワンを決する今年の全米オープンは、男女が2週連続で同じコースをプレーするという史上初の試みに注目が集まった。もちろん、男子は7562ヤード、女子は6649ヤードとパワーの差による距離の違いはあれど、ともにパー70でピン位置も同じように厳しいという史上稀にみる過酷な戦いとなった。 

 ふたを開けてみれば、男子はマーティン・カイマー(ドイツ)が通算9アンダーで2位に8打差をつけ圧勝。元世界ランキング1位の29歳がドイツ人として初めて全米オープンチャンピオンに名を刻んだ。

 一方、女子は男子2位のリッキー・ファウラーと同4位のキーガン・ブラッドリー(ともに米国)からヤーデージブックをもらったというミシェル・ウィー(米国)がただ1人のアンダーパーとなる通算2アンダーでメジャー初戴冠。『生の情報』を生かして特徴的な難グリーンを攻略すると、3パットはゼロ。最終日、終盤の16番でダブルボギーをたたき2位に1打差に詰め寄られるも、17番で起死回生のバーディーパットを沈めるドラマチックな展開は、ゴルフファンの記憶に残る名場面となった。

ウィーは一般紙の総合面トップで写真掲載

 そこで、全米で最も大衆的な一般紙『USA TODAY』(1部2ドル)の大会最終日を伝える紙面を比較してみた。カイマーの優勝(6月16日付)はスポーツ面トップ上段に小さな写真とともに『最初から最後までカイマーだった』という見出しが載ったが、ウィー(6月23日付)はイラク情勢も載っている総合トップ面に登場。スポーツ面トップにもトロフィーを掲げた写真が大きく掲載され、米国内での知名度の高さがうかがえる。

 中面では男子はカラー、女子はモノクロと男子に軍配が上がったが、カイマーの優勝を淡々と伝える記事の他には、男女同一コース開催により最終日朝にブロンド美人のナタリー・ガルビス(米国)が男子に混ざり練習したとか、17歳のリディア・コ(ニュージーランド)がセルヒオ・ガルシア(スペイン)とハグをしたなどの女子選手の動向が記事になっており、やはりコースに花を添えた女子選手の紙面貢献度は大きい。

 肝心の優勝原稿では、「ウィーがLPGAを盛り上げる」という見出しがつき、2位に終わったステーシー・ルイス(米国)の「全米で放映されていて、パインハーストが舞台で、ミシェル・ウィーが勝つなんてこれ以上の場面はない」というコメントや、今季メジャー初戦を制した19歳のレクシー・トンプソン(米国)の「女子ゴルフ界にとって意味がある」という談話を紹介。15戦9勝とアメリカ勢が活躍する今季を「ドリームシーズン」と呼び、「視聴率が上がり、観客数、注目度が上がりそうだ」している。

男高女低の米ゴルフ界でウィーが見せた意地

 ウィーにとって唯一の誤算は、同じ日にサッカー・ワールドカップで米国代表が最後の最後でポルトガル代表に同点に追いつかれ引き分けに終わったことか……。それでも、米国時間6月25日には中継局であるNBCの国民的朝のニュース番組『Today Show』に出演する予定になっており、カイマーにはなかった米メディアのラブコールを一身に受けている。

 圧倒的に女子ツアーが人気の日本とは違い『男高女低』の米ツアー。今季はゴルフ専門誌『ゴルフダイジェスト』がアイスホッケー界の往年の名プレーヤー、ウェイン・グレツキの娘で、PGAツアープロのダスティン・ジョンソンの婚約者のモデルを表紙に起用したことで、マイク・ワン米女子ツアー会長がわざわざ「偉大な記録を残した選手がいるのに、ポーズを取るモデルを起用するとは……」とコメントを発表する騒動となったばかりだ。

 24歳になったウィーのメジャー制覇は、“負け犬”に見られてきた女子選手の意地の集結にも見える。
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著者プロフィール

サンケイスポーツを経て、2006年からフリーに。米女子ツアーを中心にバンクーバー五輪も取材し、新聞、通信社、ネットメディアに幅広く執筆(Twitterは@m_sachi)。2011年にニューヨークで第一子出産し子育て分野にも挑戦。ヤフージャパンで「NY発 子育て新常識」(http://bylines.news.yahoo.co.jp/miyashitasachie/)を連載している。

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