体操男子、内村に続く選手は現れたか 課題の種目別では大学生が躍進

椎名桂子

種目別は白井、亀山らが有力

平行棒で抜群の安定感を発揮した神本 【榊原嘉徳】

 一方、日本の課題と言われる「スペシャリスト(特定の種目に力のある選手)」の代表争いも面白い。世界選手権代表6人のうち、個人枠は、すでに内定を決めている内村を除いた2人が、NHK杯終了時点で選出され、残り3人は7月5、6日の全日本種目別選手権(千葉ポートアリーナ)に決定を持ち越す。つまり、スペシャリストが代表の座を争うのは、この3枠だ。代表選出には、種目別最上位になることと、派遣標準得点を突破することが条件となる。昨年は、この高い基準を突破して世界選手権に出場した白井健三(岸根高)が、世界選手権の種目別のゆかで金メダルを獲得している。

 今年も、この標準得点越えを成し遂げ、スペシャリストとして世界選手権代表に名前を連ねる可能性が高いのは、すでに実績のあるゆかの白井、あん馬の亀山耕平(徳洲会体操クラブ)、つり輪の山室、さらに昨年も標準得点まであと一歩だった鉄棒の植松鉱治(コナミ)らだ。

伸び盛りの大学生にも代表入りのチャンス

 しかし、今大会では大学生を中心に躍進が著しかった。彼らの中には、スペシャリスト枠を虎視眈々(たんたん)と狙っているだろう選手も多い。

 ゆかでは、昨年度の高校総体チャンピオンで、3回半ひねりもこなす早坂尚人(順天堂大)、あん馬でG難度、F難度の技を入れ込んだ華やかな演技を見せた長谷川智将(日本体育大)、内村と同じ「ヨーII」を跳び、高さと力強さのある跳馬を見せた斉藤優佑(徳洲会体操クラブ)、平行棒では、力強くもなめらかな実施で抜群の安定感を発揮した神本雄也(日本体育大)ら。いずれも、まだ派遣標準得点との開きはあるが、2カ月後の種目別選手権に向けては、挑戦レベルまでDスコア(難度点)を上げ、代表が決まる「種目別最上位+派遣標準得点突破」を狙ってくるだろう。特に伸び盛りの大学生には、その可能性も十分にある。

 昨冬から今春にかけて、次の日本代表候補といえる選手の多くがさまざまな国際試合に派遣され、いずれも好結果を出している。それでも、あまりにも層の厚い日本の体操界では、ほとんどの選手が日本代表になることは難しい。その狭き門に全力で挑む選手たちの壮絶な代表争いは、ある意味、世界選手権や五輪よりも熱い。6月8日のNHK杯、7月5〜6日の全日本種目別選手権には、ぜひ注目してほしい。

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著者プロフィール

1961年、熊本県生まれ。駒澤大学文学部卒業。出産後、主に育児雑誌・女性誌を中心にフリーライターとして活動。1998年より新体操の魅力に引き込まれ、日本のチャイルドからトップまでを見つめ続ける。2002年には新体操応援サイトを開設、2007年には100万アクセスを記録。2004年よりスポーツナビで新体操関係のニュース、コラムを執筆。 新体操の魅力を伝えるチャンスを常に求め続けている。

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