「笑顔が生まれるから山を歩く」 “山ガールのカリスマ”四角友里

スポーツナビDo

「山をなめるな」と怒られた経験も

【写真提供:四角友里】

 ニュージーランドでの山スカートとの運命的な出会いを通して、四角さんのアウトドア熱は一気に開花。そこから、見た目のほんわかした印象からは想像がつかないほどの行動力を発揮していく。

「帰国してからネットで調べたんですけど、日本には山スカートが全然なくて。海外のアウトドアブランドが作っていたので、通販などで最終的に40着ぐらい集めました(笑)。そこからハイキングをしてみたり、いろいろ試したんです。このスカートはキャンプにはいいけど山には向いていないとか、こっちは大丈夫だとか、研究をしていきました。

 自分がはいて、トイレや着替えなど、どうしてそれが楽かとか、女性特有の体力のハンディを補ってくれるとか、かわいいので気持ちが上がるとか。メリット・デメリットを含め、いろいろ企画書にしたんです。それを自分が行ってたアウトドアショップの方なんかに配って、あとはメディアに売り込みもしました。ボトムスの選択肢に山スカートが加わることで、ひとりでも多くの女性に、あの美しい自然を見てもらえるんじゃないか……という気持ちでした。
 最初のころは、山のベテランの方に怒られたりもして。『山をなめるな。チャラチャラした格好で来るな』などと言われました。謙虚に受け止めながらも、それは違うなと思うときには、きちんとお伝えして。あとは、なぜそれを選ぶのか、はいている女性がいるのか、その気持ちを分かってもらうために、泊まるところ泊まるところの山小屋のご主人にお話をして回ったりしていました。そんな中で、少しずつ理解してくださる方々がいたんです」

「山に行くと、自分の笑い方が分かる」

【坂本清】

 地道な活動は 徐々に実を結んでいく。某アウトドア雑誌で特集が組まれたことをきっかけに、賛同するアウトドアメーカーも出てきた。その後、わずか数年で山スカートの存在は一気に広まった。いったい、四角さんを突き動かしたものは何だったのか。

「山にもらったものが、多いからでしょうね。会社員で働いていたときに、いろんなものにもまれて苦しかったときがあって。大人になって、あえて鈍感になって、やり過ごす方法を覚えていこうとした。

 それが自然の中に入ったときに、キレイなものを見て、ちゃんとキレイと言える。うれしいとき、楽しいときに、素直に声を上げることができる。そうすると街に戻ってきても、夕焼けに励まされたり、ビルの隙間に見える空を見て、山とつながっているんだなとか、『感じる心』が戻ってきたんです。
 あとは、山に行くとみんな笑顔がもらえるし、自分の笑い方が分かるんですよね。たまに山の写真を見返していて、『私って、こんな顔で笑うんだな』と教えてもらうことがある。そうやって、自分の中にある自然なことが、ちゃんと分かってくるんです」

自分らしいスタイルで続ける「山歩き」

【坂本清】

 インタビュー中、四角さんは「山登り」という言葉を使わずに、常に「山歩き」という表現で語っていた。それは自分らしい山のスタイルを探し続けた、四角さんならではの自然な言葉なのだろう。
「冒険家の方が命を掛けて挑戦するような山じゃなくて、たとえ小さな山だったとしても、その人にとって大冒険であれば、心の中に残るものになると思うんです。

 それに、山登りと言うと登らないといけないけど、山歩きだったら登らなくてもいいじゃないですか、下ったっていいし(笑)。だから、私は山歩きがいいなと思っているんです。

 山へ行くことは、誰でも本当はできるものなんだとハードルを低くしたい。エスカレーターに乗れない私が身をもって失敗して、自分はこうしてきたよ、ということを伝えていきたいです。山のプロじゃなくて、私だからこそ言えることがあると思っています」

(取材・文:栗原洋/スポーツナビ)

 スポーツナビDoでは、3月から四角友里さんの連載がスタートします! 山ガールの皆さんも、山にまだ行ったことのない方も、ぜひ楽しんでいただきたいです。

四角友里
アウトドアスタイル・クリエイター。「大好きな自然と、自分らしいスタイルで繋がりたい」というメッセージを掲げ、執筆、トークイベント、アウトドアウェアのプロデュースなどの表現活動を続ける。2010年、ニュージーランドの永住権を取得。日本とニュージーランドの山歩きをライフワークとしている。山スカートの第一人者、着物着付け師の顔も持つ。著書に、ライフスタイルエッセイ『デイリーアウトドア』(メディアファクトリー)、自身の試行錯誤から学んだ山のノウハウが満載の『一歩ずつの山歩き入門』(エイ出版社)がある

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著者プロフィール

習慣的にスポーツをしている人やスポーツを始めようと思っている20代後半から40代前半のビジネスパーソンをメインターゲットに、スポーツを“気軽に、楽しく、続ける”ためのきっかけづくりとなる、魅力的なコンテンツを提供していきます。

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