ジュビロ磐田、1年でのJ1復帰へ挑戦 シャムスカ、松井……再建を託された者
リーダーシップを発揮する新加入の松井大輔
アテネ五輪世代で2010年W杯でも共に活躍。松井と駒野の“親友コンビ”にも期待 【Getty Images】
昨年までは、実績のある駒野やFW前田遼一らをいじる者など、チーム内では皆無だった。若手は実績のある選手たちをリスペクトしているが、遠くから見ているのが精いっぱい。それは両者の隔たりを生む要因でもあった。ところが今季は松井のベテランいじりが笑いを呼び、若手との距離は一気に縮まった。「チームの潤滑油というか、つなぎ役として貢献度は大」と同コーチは目を細める。
そんな松井への期待の声は、日に日に高まっている。昨年厳しい戦いを強いられた要因の一つが、ピッチ内外でチームを引っ張るリーダーの不在だと言われたが、その適任が松井だという声だ。山田は「チームを一つにまとめるために何かをやってくれるタイプ」とし、服部強化部長も「昨年、チームにリーダー的な存在がいなかったことは事実。その役割はもちろんだが、松井にはムードメーカーとしても期待したい」と、補強は大成功だった。
そんな松井が、2月5日までの練習試合で3戦連続キャプテンマークを巻いた。監督は「チームにはリーダー役が果たせる選手が何人もいる。だからまだ決められない」と明言は避けたが、「経験がありプレーの質も高い。周囲の選手ともうまくやっている」とキャプテン有力候補の一人だと強調した。周囲の声に松井も「やれと言われれば……。指名されたら、みんなが認めてくれるようなキャプテンになりたい」と、期待に応える姿勢ものぞかせた。
課題を徐々に克服し、順調な出足
課題とは『守備の甘さ』である。シャムスカ監督以下、チームスタッフが昨年の試合映像などを分析し見つけ出した。「ボールを持った相手へのマークが十分でなかった」というのがスタッフの共通認識だ。「なぜ行かないのかを選手から聞き取ると、抜かれるのが怖いからだという。だが、逆にそれがリスクを高めることになる。相手に自由にボールを持たせることになれば、そこからの展開もあっさり許してしまう」と、リスク回避のつもりが負の連鎖を招いていたのだ。
ところが「その部分だけで言えば、京都戦は改善されていた」と自信を見せる。前線からの守備を徹底することで相手のミスを呼び、試合ではそこからゴールも決めた。「まだまだ徹底できていないが、繰り返し言い続けることで開幕までにはさらに強化したい」(鈴木コーチ)と気合を入れた。
そして守備の強化にも、「監督が押し進める一体感のあるチーム作りが関わっている」とチームスタッフは指摘する。理由をこうだ。「対話によって連携が密になることで、守備の場面でどう動けばいいのかを確認できる。そこから見えてくるのが守備の一体感だ」と。
シャムスカ新監督が推し進める対話重視の路線は、チームの一体感に加え戦術の強化にも好影響をもたらした。そして昨年不在と言われたチームリーダーの役割は、新戦力の松井らが埋めるめどが立った。1年でのJ1復帰に向け、シャムスカ磐田が順調に船出したことは確かなようだ。
<了>