チーム変革の中で色あせた『磐田カラー』=クラブ史上初の2部降格が決まった要因

望月文夫

ピッチ上のリーダー不在……勝ちきれない試合が増える

色あせた『磐田カラー』。黄金時代の輝きを取り戻せる日が来るのか? 【写真は共同】

 核になってチームを引っ張っていくリーダー的な選手が不在だったことも、降格へと加速させた大きな要因の一つだ。
 チームには、FW前田、DFには駒野、伊野波雅彦と日本代表の常連組が3人もいた。「彼らがリーダーの役割を果たしてくれるだろう」と、磐田の状況に無知なサッカー関係者はいうが、どうもそんな短絡的な話ではない。
 磐田の元指揮官も「リーダーは代表入りしているからできるというものじゃない。性格やチーム内での位置など多くの要素が絡んでくる」と前置きし、「今のチームには、かつての名波やゴン中山のような存在感のあるリーダータイプは皆無」と断言する。

 では、いったいリーダー不在がどう影響してくるのか。例えば、今季の磐田は第31節時点で、引き分けが11試合、1点差での敗戦が13試合。そのうえ残り15分以内の失点が19もある。元指揮官は「同点の状況から勝ち切る。あと1点取れば勝ち点が取れる。さらには勝ちきれない、守りきれないという勝負弱さが明らかな数字だ。名波のような選手がピッチにいて、チームを鼓舞したり落ち着かせることができれば、勝点にも大きく影響したはずだ」と、リーダーの必要性を説く。
 そしてクラブ関係者からは、「勝点をさらに20は上乗せできた」という声も出たほどだ。あるOBの評論家は責任の所在をこう締めた。「どういう選手で編成するかは、強化担当者でありGMの役目。そこが怠慢だったのか、あるいは力不足だったというしかない」と。

かつての栄光を取り戻すための建て直しが必要

 長く磐田見てきた人ならば、ここ1,2年で気づくことがあるはずだ。これまでの磐田とは違うことに。
 監督やGMをはじめ、多くのチームスタッフに古くからの関係者が少なくなったのだ。これまで磐田のためにあらゆる面で奔走してきたスタッフがいなくなり、それによっていわゆる『磐田カラー』が徐々に失われてきている。さらに言えば「意図して磐田カラーを払拭した」という声も少なくない。

 例えば練習風景だ。数年ぶりに足を運んだというあるOBは「監督と選手の関係が一方通行のように見え、まるで高校の部活のようだ」と驚く。「以前はもっと自由な雰囲気があった。そういう良い雰囲気の中で先輩と後輩の良い関係が生まれ、若手は社会人として成長していった。もちろん、プレーヤーとしても人としてもだ。そういう良い雰囲気を作る空気さえ感じなかった」というのだ。

 もちろん、かつての磐田カラーのすべてが良いものだったと断言はできない。しかし、少なくともそういう自由なムードが『磐田カラー』であり、成績が伴っていたことはまぎれもない事実だ。古くからのクラブスタッフは、こう言い切った。「ここまで経験した良い部分が、一つ一つ積み上げられて『名門』と呼ばれるようになった。それを間単に払拭しようとしたことが、降格を招いた根本の要因だと思う」。

 降格決定直後にクラブの高比良慶朗社長は、「1年でJ1に戻ってくる」と力をこめ約束した。そしてサポーターの期待は、J1への再昇格はもちろんだが、また優勝争い演じる強い磐田だ。そのためにいま必要なことは、かつての磐田カラーを取り戻すことではないだろうか。
 約束通りに1年でJ1復帰するか、そしてかつての栄光を取り戻せるか。今後のクラブの手腕が問われる。

<了>

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著者プロフィール

1958年生まれ。ランニング、サッカー等の専門誌で編集記者。その後フリーとなり、陸上、サッカー、バレーボールを中心に専門誌等に執筆。

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