世界が注目 激戦フィギュア日本代表=お国柄が出る海外サイト、閲覧のすすめ

長谷川仁美

本物のスター浅田真央 鈴木明子の内面に強い関心

スケートカナダ2位の鈴木明子。海外サイトにインタビューが掲載された 【写真は共同】

 女子については、グランプリシリーズに浅田真央、鈴木明子の2名しか出場していない現段階では、五輪に出場する3人は誰になるか、という話題はあまりない。海外メディアの注目は、浅田、鈴木のそれぞれのこれまでのストーリーに集中している。

 スケートアメリカについて報じる新聞で「the one truly global superstar at Skate America this weekend is Japan's Mao Asada(今週のスケートアメリカでの本物の国際的なスーパースターは日本の浅田真央)」(NBC Sports)と評された浅田は、前回バンクーバー五輪後の数シーズン、ジャンプを一から時間をかけて見直し、昨シーズンの世界選手権では銅メダルを取るまでに戻ってきたことなど、丁寧に触れられている。アメリカでの大会ではあるが、優勝した浅田は、アメリカ人のアシュリー・ワグナーと同じくらいの記事の量で、好意的に受けとめられている。

 スケートカナダでは優勝したロシアの15歳、ユリア・リプニツカヤに注目が集まったものの、観客の心をとらえた2位の鈴木明子の演技や彼女の内面にも、強い関心が寄せられている。世界中のスケートファンが訪れるサイト『Absolute Skating』には、スケートカナダ開催のタイミングでフィンランディア杯での鈴木のインタビューが掲載されている。
 今シーズンのプログラムや振り付けについてのインタビューを読み、スケートカナダでの叙情的な演技を見たファンたちは、彼女を「mature(円熟した)」スケーターだと呼んでいる。
 村上佳菜子や宮原知子、今井遥については、今週末の中国杯以降の4大会での活躍が待たれる。

おおらかな海外報道に目からうろこ

 海外での報道を見ていて感じるのは、1つの試合で少しミスをしてしまっても、それがすべてではない、というおおらかな雰囲気だ。もちろん、自国選手のことになると熱い論調になり「そんなことまで言ってしまうのか?」と思うような言及もあるが、スケーターの長いシーズンには浮き沈みがあり、それをそれぞれ経験として蓄積して五輪や世界選手権にむかっていく姿を流れとして俯瞰する姿勢をよく見かける。そういう見方もあるのか、と目からうろこが落ちることも少なくない。

 日本でフィギュアスケートが注目されるようになって久しいが、日本選手中心の報道になりがちだ。それは当然なのだが、さらにもう一歩、海外の記者やファンたちが日本選手をどう見ているのか、また、日本選手たちがフィギュアスケートの世界の中でどう捉えられているのか、まで知るようになると、フィギュアスケートの新しい世界がそこにあることに気づく。五輪シーズンの今年は、日本選手たちが海外メディアに取り上げられることも多い。現在は、翻訳サイトという強い味方もある。英語の記事に限らず、アネクドート(ロシアの小話)や不思議な比喩が入ったロシア語インタビューや、これまでなかなか知ることのできなかった中国選手たちの生の声が見られる中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」、自国選手や連盟にもキツいフランス紙、日本語訳もよく出ている韓国語の記事など、それぞれの報道に触れながら、各国のお国柄もぜひ楽しみたい。

<了>

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著者プロフィール

静岡市生まれ。大学卒業後、NHKディレクター、編集プロダクションのコピーライターを経て、ライターに。2002年からフィギュアスケートの取材を始める。フィギュアスケート観戦は、伊藤みどりさんのフリーの演技に感激した1992年アルベールビル五輪から。男女シングルだけでなくペアやアイスダンスも国内外選手問わず広く取材。国内の小さな大会観戦もかなり好き。自分でもスケートを、と何度かトライしては挫折を繰り返している。『フィギュアスケートLife』などに寄稿。

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