『ももクロ×オリンピック』国立へ聖火を!=演出家・佐々木敦規氏インタビュー
「新日本プロレスファンもモノノフさんもいっしょ」
佐々木さんはプロレスファンもモノノフも同じ“熱”を持っていると語る 【スポーツナビ】
「本当ですよ。これもメンバーにとっても、スタッフにとっても壁なんですよ。日産もこういうことがありました、じゃあ次はももクリを西武でやりますと。『え? 西武? ウソでしょ?』って2度聞き返す感じでしたね(苦笑)。今年の春にやったときも、むちゃくちゃ寒かったわけです。僕ら前日、前々日に仕込みから球場に入っているから夜中までいるわけですよ。そうしたら夜中に温度がすごい落ちてきて、毛布にくるまりながら作業とかしてたんですね。でも、次はそんなことも比較にならないくらい寒いわけですよね。じゃあこれ、どうするんだ、寒いじゃんと。お客さんもそうだし。でもやるんだと言うから、どうしようと。それじゃあ、覚悟を決めないとダメだなと、人間は覚悟がないと基本ダメじゃないですか?」
――ええ、そうだと思います。
「春はね、僕らに覚悟がなかったんですよ。寒いという覚悟がなくてリハーサルとかやったんで、むちゃくちゃ寒かったんですよね。でも、寒いよという覚悟があれば、それなりの予防をして、対策を練って臨めば、何とかなるんじゃないかなと思い始めてきました。じゃあ、覚悟を持たせるためにはどうしたらいいかなと思ったとき、寒いよということを全面的に出す。要は逆手に取るというか」
――暖かくしますから大丈夫ですよ、というわけではなく。
「はい、そうじゃなくて。そんなことできないですしね。だったら、どうするの?となったとき、最初から『寒いですよ、みなさん、覚悟して来てくださいね』ってしないと、たぶん寒さに負けちゃうと思います(笑)。スタッフも、お客さんも、メンバーも。だから、そこは逆手にとって、“極寒のももクリにようこそ”っていうことにしたんです。だから、会場のビジョンにも『最低気温、マイナス何度』みたいなものをあえて出しました。逆にウソついてもしょうがないじゃないですか。暖かくしますと言っても無理ですから、だったら覚悟して来てくださいと。
だから、すごい精神論になってしまうんですけど、メンバーも言ってましたが、みなさんの熱で西武ドームを暖かくしましょう、って。そういう思いで来ていただきたいなと思います。それしかないですよね(笑)」
――はい、それしかないと思います(笑)。“熱”ということで言いますと、K−1、PRIDE、こないだの新日本プロレスのG1クライマックス決勝戦もそうだったんですけど、お客さんの熱が本当に会場を熱くすると言いますか、体感温度とは別のところで熱くしていますよね。
「こないだの新日本の両国大会は凄かったですよね」
――はい、残念ながら僕は両国に行けなかったんですが、テレビからでも物凄い熱が伝わってきました。おそらく試合の質としては、どの団体もそこまで大きな差はないと思うんですけど、じゃあ今の新日本は何がそんなに違うのかというと、お客さんの熱なのかなと思います。
「そう、お客さんが完全に作っていましたね。僕は現場で見ていたんですけど、やっぱりお客さんが出来上がってる。ももクロに対するモノノフさんといっしょで、お客さんがみんなで選手を応援しているし、それは選手に敏感に伝わるじゃないですか。それはモノノフさんとメンバーの信頼感もそうですけど、やっぱりいっしょだなぁと思って。やっぱり、お客さんは大きいなぁ、あれはハンパなかったなぁと思いましたね」
――そうですね。お客さんがいっしょになって戦っていますよね。
「そう、そう。だから、プロレスが一時不遇の時代があって、そこを頑張って頑張って、歯を食いしばって頑張ってきた選手とフロントが報われてきましたよね。新日本プロレスのスタッフさんとも話すんですけど、そこがお客さんに伝わるというか、プロレスの構造だとか仕組みだとかそういうことはどうでもよくて、勝負論とか色んなことが分かった上で、みんなが楽しめる環境にやっと育ってきた。PRIDEとかK−1とかいうものが出てきたとき、プロレスの存在意義がちょっとぼやけてきた部分があって、そこからプロレスが今度どう勝ち抜いていくかというときに、迷走した時代とか色んなことがあって、プロレスって何なんだろうねと分からなくなってきて、ちょっとプロレスが崩壊しかけたときに新日本プロレスが1つのラインを決めて、1つの目標を持ってやりはじめた。それで何が上手だったかというと、お客さんを巻き込んだこと、お客さんを味方につけたこと。それは大きいなと思いましたね。でも、お客さんをつけるだけじゃダメで、今度はお客さんを離さないことが必要だから、そこを新日本プロレスは上手にやってるなぁと感じましたね。選手もそうだし」
――たとえ満員でも、しらけてる会場ってありますものね。
「『こんなつまらないの、次はもう来ないよ』って思わせたら負けですよね。そうなっちゃたらもうアウトだから、そうしないための企業努力というか、運営努力を常にやっているんだろうなぁと、新日本プロレスには感じましたね」
「アイドルなんですけど、一方でアスリートだから」
「いやあ、そうなんですよね。僕は演出過多だとよく叩かれるですけど……」
――いえいえ、そんなことはないと思いますが……
「いや、それは分かっていて、演出過多なんですけど、ももクロの演出の半分はたぶんモノノフさんなんですよ。モノノフさんのコールと、ペンライト・サイリウムの光と、あの熱がももクロを演出してくれているんですよね。あと半分は本当にこの子たちの魅力ですよ。それで僕の演出過多の部分は、ほんのちょこっとだけですよ、実際は。そんなもんですよ。もちろん分かっています、メンバーとモノノフさんたちだけでステージが作れるということは。でも、やっぱり僕の仕事は世間を振り向かせることだから、そのための努力として、ほんのちょこっと僕の演出の隙間をいただいて(笑)、今やっているという状況ですね」
――なるほど(笑)。ももクロちゃんのライブに初めて行った人からは、よく「スポーツみたい」という声を聞くんです。それは応援しているのか、メンバーと一緒に戦っているのか、もしくはメンバーを相手に戦っているのか、そういう感覚が生まれるからかなと。野球やサッカーでも応援したりコールしたりする楽しみがありますし、一生懸命歌って踊っているメンバーを、こっちも一生懸命応援したりして熱をぶつけ合うことが、スポーツとうまくリンクしているのかなとも思います。
「おっしゃる通りだと思いますね。だから、アイドルなんですけど、一方でアスリートだから、ゴールできるのかこれ?というハードルみたいなものが色んなところに散りばめられているから、たぶんモノノフさんはむちゃくちゃ応援してくれているんだと思うんです。だから1曲目の『overture』から、プロレスで言うと入場曲ですよ、アレで入場して、『真剣勝負で生きてリングから降りられるの、これ?』というプロレスとかPRIDEとかに相通じる“命をかけてるんじゃないか”という部分がすごくありますし、もちろん他のアーティストさんとかみなさんそうなんでしょうけど、ももクロの子たちは特に曲もそうだし、踊りもそうだし、結構ハンパない体力ですし、エビ反りを1回やるにも物凄く大変な体力と運動能力が必要ですから、正直、毎回ヒヤヒヤですよね。どこか痛めるんじゃないかとか、たとえば倒れちゃうんじゃないかとか、常にそういう不安、心配はありますよね」
――そういうものがにじみ出るから、見ているモノノフさんも真剣にぶつかっていく感情が生まれるのかなと思います。
「まだ子どもたちだし、体もしっかりできていないでしょうから、よく例えられる高校野球といっしょなんですよね。こないだの甲子園じゃないですけど、このまま毎試合投げ続けていたら10年もつ肩も3年で終わっちゃうような、そんなところがありますよね。だけど、結成当初からそういうことをやってきましたので、手を抜くことを知らないというか、手を抜けないんですよ。だから、じゃあこのままこれで行けるのかというところの危惧はあるのかもしれないですが、今さら手は抜けないですよね。そういう意味で言うと、全力でやり続けるアスリート部分をファンの方は見てくださっていて、本当にゴールできるのか、どんな形でゴールを迎えるのか?というところで見てくれているのかなとも思いますね。
だから、さっきの猫ちゃんの話じゃないですけど、全然似て非なるものなんですが、マラソンに近いものなのかもしれないですね。スタートから始まってゴールするときには、どういうゴールを迎えるんだろうという、1つの線になるストーリーが。途中でお腹が痛くなり、給水に失敗し、抜きつ抜かれ合って最後のトラックに入ってきたときのデッドヒートみたいなものがマラソンの1つの形態だとしたら、それに近いものがあるかもしれないですね」
――そうですね。しかもそれが、ペースを考えずに走っているような感じがしますから。
「そう! そうなんですよね。ペースを考えてないんですよ。ペースメーカーがいないから、そんなに飛ばしてどうするんだよ!みたいなね。そうすると目が離せなくなるじゃないですか。途中で抜かれるんですけど、また息を吹き返して、最後のトラックでデッドヒートで前を抜いて勝ったら、こんな感動はないじゃないですか。ももクロはそういうことに近いんじゃないかなという気がしますね」
※次回(9月17日掲載予定)はインタビュー最終回。8.4日産大会を飛び越え、かつて佐々木氏が携わってきた総合格闘技イベント「PRIDE」の現場との共通点、モノノフとスタッフがももクロに捧げる無限の愛、そして佐々木氏から見たメンバー5人の現在にまで話題は及んだ。そこで佐々木氏が語った、すべてのスポーツファン驚愕の「百田夏菜子は○○○○です」とは?
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