『ももクロ×オリンピック』国立へ聖火を!=演出家・佐々木敦規氏インタビュー
聖火台に灯した火を国立競技場に持って行こう!
「そうですね。ずっとデビューから掲げていた目標である紅白出場というのがあって、それを去年成し遂げられた。ですが、やっぱり大きい目標というか、ずっと先の目標というものを持ち続けないとダメだと思うし、壁を乗り越えていくのが彼女たちももいろクローバーZの“終(つい)のテーマ”なんですよね。だから、もちろん紅白にずっと出続けるということも大切な目標なんですけど、新たな目標として掲げた国立というものが、やはりこれも巨大な敵であり、やっつけなければいけない大きな組織というか(笑)。もうショッカーみたいなものですから、ゾル大佐が負けたら今度は死神博士が出てきて、というように必ず来るんですよ、でっかい敵を倒したら、また次にでっかい敵が出てくる。でも、それを倒すのが正義のヒーローなんですけど、そういうようなものですね。それが今は、国立競技場であると。掲げた以上はそこに向けて走り続けなくちゃいけないよ、忘れちゃいけないよ、ということで聖火を作りました」
――国立競技場は来年の夏に改修が始まって、新しくオープンするのが2019年3月予定。これは2020年東京五輪に合わせてということだと思いますが、僕個人の思いですと、ももクロちゃんが国立競技場でライブを行うのは、来年の改修前じゃなくて、新・国立競技場でのこけら落としとか、東京五輪で日本を代表するアイドルとして全世界に向けて発信するとか、そういう形で国立ライブを実現してほしいなと思ってしまうんです。
「そう言ってもらえるとありがたいですねぇ。今回、開会式にも日本一のマーチングバンド(神奈川県立湘南台高等学校吹奏楽部)を入れたりとか、オリンピックの開会式をオマージュして作ったりしましたし、僕は古い人間なのでロサンゼルス五輪でのロケットマンが出てきたりとか、トータル的なオマージュはどこかしらにあるので、そういう意味で2020年東京オリンピックみたいなものは、すごく意識しました。僕らはともかくとして、2020年には日本を代表するアイドルグループということを謳えるようなエンターティナーになってほしいから、そういうところを見せられるオープニングにしたんですね。そこを狙って、自分たちの意識を高めることも含めて、日本とか、日本代表とかを念頭に置いたオープニングにしましたね」
――今回の日産大会を今思い返してみても、夏のバカ騒ぎという一方で、これは“ももいろオリンピック”だったのかなという感想が自分の中で生まれてきました。たとえば、国立でのライブ実現が2020年東京五輪に合わせての開催だとしたら、7年後になってしまうので4年に1度ということではないのですが、そういった一大イベントへ向けての始まりなのかなとも思いました。
「国立でのライブがいつできるかはこれからの話なので、僕も分からないんだけど、確かに“ももいろオリンピック”とか“世界ももクロ”ということはもちろん意識して頭の中で描いていました。だから今回は“WORLD SUMMER DIVE”とタイトルをつけて、日本から世界へというところを意識して。でも、その中でもまずは日本をちゃんとしっかりしていこうというスタートなんですね。世界とかワールドとか五輪とか、そういう世界観はもちろん大事にしていこうという気持ちはあります。でも、やっぱり根底にあるのはそこまで背伸びしないというか、根底はバカ騒ぎなんですよ。だから最初にも言ったように、このバカ騒ぎをただバカになってワーッと騒ぐだけじゃなくて、しっかりとした、神聖なものと言ったら大げさなんですけど、なんだろうな、単なるバカ騒ぎにしたくない。バカ騒ぎをもっと、もっとワールドワイドなバカ騒ぎにするというか、そういうスタートが日産だったのかなぁという思いがあります。
だから、布袋さんに国歌を演奏してもらって、そこから国旗がバーっと上がってという、日本に対する、国に対するリスペクトはもちろん僕らは大きいですし、そこをしっかりした上で、じゃあ今のももクロにできることと言ったら、神聖なライブができるかとかは分からないですけど、本当にアーティスティックに寄せたライブなのかというと、そうじゃない。お客さんに向けてバカみたいに水をまいたり、ライブの途中に駆けっこをしたりとか、そういうことなんだと思う。ですから、あえてそこにお客さんに向かって『これから私たちバカ騒ぎをやらせていただきます』という、それはすべての人たちに尊敬の念を持って、国に対して、日本を愛して、そういうことを踏まえてバカ騒ぎをしますよという宣言というかね、そういう感じでしたね。だって、背伸びしたってしょうがないじゃないですか」
――そうですね。僕がちょっと大きいことを言い過ぎてしまったんですが、佐々木さんの今の話を聞いて、確かにももクロちゃんたちの魅力は等身大というか、背伸びし過ぎても似合わないと言いますか。
「そうなんですよ。普段接していると、本ッ当にうるさい近所の女子高生がね、キャッキャ、キャッキャやっているのとまったく一緒ですから(笑)、なんら普通のうるさいガキどもだったりするわけですよ。でも、これがステージに行くとスイッチが入ったのごとく、オーラと、すべてが変わる。スターってこういうものなのかなって思います。こういう子たちが、根底は普通の子たちですから、そこを背伸びしてもしょうがない。そこはやっぱり、今できることの全力をやるのがももクロだから、今できること以上のことをやったって、見せるものにはならないかなと常にありますね」