“和製ボルト”飯塚翔太が描く成長曲線=「桐生らより大きなインパクトを」

折山淑美

「決勝に行けたら思い切って勝負したい」

世界選手権での目標は準決勝進出だが、「思惑通りに行ければチャンスもある」と決勝進出も視野に入れる 【スポーツナビ】

 こう言って笑う飯塚は、日本選手権を20秒31でキッチリ勝ったことも、自信の上乗せになったという。
 だが世界選手権をにらめば、100メートルの記録をもう少し上げなければいけないとも言う。現時点では前半を100メートルのベスト+0秒1くらいの10秒38くらいで走れば、後半もうまく9秒8くらいで走れる状態だ。だから前半を10秒28くらいまで上げれば、後半も若干速くなって20秒0台も見えてくるだろう、と。ユニバーシアードで100メートルの記録が自分より0秒1〜2ほど速い選手に前半で差をつけられて、そのままゴールしたことでもそれを強く感じたという。

「桐生や山縣が注目されているから、それよりインパクトを与えるためには、後半で黒人選手をぶち抜くような走りをしないとダメでしょうね。現実的にそれは難しいですが、世界選手権でも、準決勝で自分の思惑通りに前半を10秒28くらいで行ければチャンスもあると思うんです。でも、それより上に行くためには違うイメージで走る必要もあると思うから……。もし決勝へ行けたら、そこでは思い切って勝負をしたいなとも思っているんです」

 今回のモスクワでの最大の目標は準決勝に進み、自分が得意とするレースパターンでしっかりと走って、それがどこまで通用するかを確かめることだ。そして、そこから16年のリオデジャネイロ五輪へ向けては、100メートルにも集中して、桐生や山縣にも勝てるようにしなければとも言う。

「僕らから見ても、100メートルの方が200メートルよりインパクトが強いから、9秒台を出される前に、自分が19秒台を出したいというのはありますね。100メートルで10秒0台まで上げて、前半を10秒1で通過できれば、今9秒8で行けている後半も9秒7くらいにはなるから、楽にいけるんじゃないかと思うんです。ただ、それとともにタフな選手になって、リレーでも予選と決勝を安定して走れるようにしなければいけないですね。去年は高平さんがいてすごく助かったので、次は僕がそういう立場にならなければいけないと思っているので」

 これからも積極的に世界に出たいという飯塚。目標とするタフなスプリンターになるためにも、今回の世界選手権では納得できる結果を出したい。

<了>

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著者プロフィール

1953年1月26日長野県生まれ。神奈川大学工学部卒業後、『週刊プレイボーイ』『月刊プレイボーイ』『Number』『Sportiva』ほかで活躍中の「アマチュアスポーツ」専門ライター。著書『誰よりも遠くへ―原田雅彦と男達の熱き闘い―』(集英社)『高橋尚子 金メダルへの絆』(構成/日本文芸社)『船木和喜をK点まで運んだ3つの風』(学習研究社)『眠らないウサギ―井上康生の柔道一直線!』(創美社)『末続慎吾×高野進--栄光への助走 日本人でも世界と戦える! 』(集英社)『泳げ!北島ッ 金メダルまでの軌跡』(太田出版)ほか多数。

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