女性の夢を叶えるのは日本!? アメリカ!?
日米女子プロゴルフツアーの産休制度の違い

日本の4倍近い米ツアーのママさんプロゴルファー

ことしから米ツアーに参戦している有村智恵は「米国ではけっこうな選手が子供を連れながらやってる。出産もキャリアもあきらめずに頑張るのが夢だと思う」と語る
ことしから米ツアーに参戦している有村智恵は「米国ではけっこうな選手が子供を連れながらやってる。出産もキャリアもあきらめずに頑張るのが夢だと思う」と語る【写真は共同】

「スケートよりも、その子の命を選んだ」

 先日、フィギュアスケートの安藤美姫が4月に長女を出産していたとテレビ朝日のスクープインタビューで明らかにした。自分のキャリアか、出産か――。そう悩むのは、女子アスリートも同じなのだ。


 フィギュアスケート界でママとして五輪に出場した選手はいないそうだが、ママさんプレーヤーが多く活躍するのが女子ゴルフだ。老若男女がプレーできるゴルフそのものの特性もあるが、1950年創設の米女子プロゴルフツアーの制度は手厚い。


「120分の3」と「144分の11」

 この数字が何を指しているか分かるだろうか? 日本ツアー「アース・モンダミンカップ」と、米ツアー「アーカンソー選手権」(ともに6月開催)での出場人数と、ママさんプレーヤーの人数だ。出場人数の違いに、日本はアメリカ以上に世代交代が進んでおり20代前半の選手が躍進している事情もあるが、米ツアーのママさん選手の数は実に日本の4倍近い。

米ツアーは無料託児所を食品会社がスポンサード

 これだけの差につながる最も大きな要因が、米ツアーが選手に提供している無料の託児所「LPGAチャイルド・ディベロップメント・センター」だ。「女性の組織として、プロゴルファーの夢と女性の夢を叶えるため」に1993年にスタート。この理念に賛同した米大手の食品会社『The J.M. Smucker Company』がスポンサードする事で無料になっており、プロゴルファーとママの二足のわらじを履く選手も、競技を続けやすい環境が整っている。


 利用法はいたって簡単。自分の練習時間やスタート時間に合わせて、子供を預けに行き、ラウンドが終われば迎えに行くだけ。基本は北米開催試合に限るが、2人の先生もツアーに帯同し、おもちゃ、子供用ベッドなども同じ物を使っている。


「え? 無料なんですか?」

 そう驚きの声を上げるのは、米ツアー常駐組の日本勢で最年少の宮里美香だ。無我夢中で米2勝目を追うなか、出産はまだ遠い未来だろう。

「自分がその状況にならないと考えられない。(子供と一緒に転戦は)すごい。だって、ただでさえこのツアーは大変なのに、ホテルで子供の面倒を見て、でも癒されるかもしれないけど、負担もあると思うし…。(どっちがいい?)本当、まだ分からない」と正直に語った。

3年の産休制度が認められている日本だが…

 一方、日本女子プロゴルフ協会は、産休を「協会は、対象者に対して〜略〜出産日から36カ月が経過するまでの間を限度として産休を認めるものとする」(トーナメント規定関連規定 産休制度 第2条)と定めているが、対象者とは「前年度LPGA賞金ランキング50名までの者」(同第1条、いずれも抜粋)。賞金シード選手しか対象ではない。

 

 さらに、この3年の産休はメジャー大会優勝による複数年シードには適応されない。例えば、ある国内女子のメジャー大会に優勝して3年シードを得たとする某選手が、来年から出産のために産休制度を申請したとしよう。すると、3年をフルに使い職場復帰してみたら、メジャーで手にした「3年シード」は終了しており、復帰と同時に、賞金シードを考えながらのプレーを強いられる事になる。メジャーVで得る複数年シードを、米ツアー挑戦への“安心材料”にはできるが、出産を考えている選手にとっては、悲しいかな、そうはならない。

「出産もキャリアもあきらめずに頑張るのが夢」

 産休制度の違いは、日米両ツアーの違いもある。米国内には3時間の時差があるため移動距離が長く、日本ツアーの選手のように、日曜日の試合終了後、飛行機や新幹線に乗って自宅に帰る事が出来ない。子供と一緒に過ごす時間を作るためには、一緒に旅をするしかないのだ。


 米ツアーでも、アニカ・ソレンスタムやロレーナ・オチョアのように、頂点を極めてから家庭に入る選手もいる。何を選ぶかは個人の選択だが、それをやり抜くには周囲のサポートが欠かせない。


 今季から米ツアーに挑戦する有村智恵が言う。

「お子さんの前でプレーしている(木村)敏美さんや塩谷(育代)さん、森口(祐子)さんを見ているとかっこいいな、と思ってた。こっちに来たら、けっこうな選手が子供を連れながらやってるし、みんな復帰が早いですよね。そういう人が出てくる事で、どっちかを選択しなきゃいけないんじゃなくて、どっちもあきらめずに頑張っていけるのが夢だと思います」


 まだまだ若い選手が多い日本ツアーだからこそ、切に願う。近い将来のため、2つの夢を追う事が出来る環境が整って欲しいと…。

宮下幸恵

サンケイスポーツを経て、2006年からフリーに。米女子ツアーを中心にバンクーバー五輪も取材し、新聞、通信社、ネットメディアに幅広く執筆(Twitterは@m_sachi)。2011年にニューヨークで第一子出産し子育て分野にも挑戦。ヤフージャパンで「NY発 子育て新常識」(http://bylines.news.yahoo.co.jp/miyashitasachie/)を連載している。

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