なぜバルサは「クラブ以上の存在」なのか=弾圧から生まれたアイデンティティー
フランコ独裁政権による弾圧
今季の行方を左右するクラシコ2連戦が近づく。果たして勝利をつかむのは!? 【Getty Images】
そんな中で、カタルーニャの人々に愛されていたバルサが弾圧の標的になるのは避けがたいことだった。解体されてしまってもおかしくない状況だった。しかし、カタルーニャのブルジョアジーがその経済力をテコにフランコ体制に取り入り、なんとか解体という事態は食い止める。その代わり、バルサの首脳陣には体制派の軍人らが就くことにはなったが、それはやむを得ないことであった。
フランコ体制は1970年代の後半まで続いた。この間、フランコ政権は国際社会に受け入れられるために、徐々に独裁色を薄めていく。その流れの中で、バルサの首脳部にも少しずつカタルーニャ人が戻ってきた。「クラブ以上のクラブ」を発言したダ・カレラス会長も、フランコ体制の協力者ではあったが、おそらくカタルーニャ人としてカタルーニャを愛するブルジョアの1人だった。ただ、バルサのカタルーニャ化を大幅に推進して、このことばに実質的な内容を与えたのはダ・カレラスの跡を継いだアウグスティ・ムンタルだった。
カタルーニャの人々とバルサは「戦友」
バルサのユニホームには、最近まで企業のロゴがなかった。ソシ(ソシオ)と呼ばれるサポーター会会員の会費と入場料収入で運営が可能だったからである。一番経営が苦しい時期には、サッカーそのものにはそう興味がない人でも会員となり、自分の苦しい家計の中から会費を捻出してクラブを支えようとした。まさに彼らにとってバルサは単なるサッカーチームではなかったのである。
エル・クラシコ(伝統の一戦)の2連戦が近づいている(2月26日にスペイン国王杯準決勝第2戦、3月2日にリーガ・エスパニョーラ第26節)。カム・ノウそしてサンティアゴ・ベルナベウ・スタジアムはいつものように、両チームのファンの熱狂的な応援で湧き上がるだろう。しかし、このような「クラブ以上のクラブ」の由来を知った後では、双方の応援が少しは違ったものに聞こえるかもしれない。
<了>
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