有村智恵、ルーキー優勝への『3つの壁』 =ゴルフ米女子ツアー展望

宮下幸恵

25歳でようやく解禁した米ツアー挑戦

今季から米女子ツアーに本格参戦する有村。ルーキー優勝なるか、その戦いぶりが注目される 【写真は共同】

 米女子ゴルフツアーの今シーズンが、バレンタインデーの2月14日に開幕する。今季はダブル宮里、上田桃子に加え、有村智恵、上原彩子が本格参戦。女王ヤニ・ツェンの不振により再び戦国時代の様相を呈している米ツアーで、主役に躍り出るのは誰か!? ルーキー有村の初優勝は!?

 長い夏休みを終え、始業式を迎えるドキドキ感を覚えているだろうか? 久々の友との再会を待ちわびつつ、少し緊張もしてしまう…。ベテランもルーキーも、そんな初々しい気持ちになる初戦の開幕が、いよいよ14日に迫った。今年は宮里藍、宮里美香、上田の米ツアー常駐組に加え、昨年末の予選会を突破した有村智恵、上原彩子の実力者が参戦する。にぎやかなメンバーとなる今年の日本勢のなかでも、なんと言っても注目は、ルーキー有村の戦いぶりと、エース・宮里藍の悲願のメジャー取りだろう。

女子ゴルフブームを巻き起こした宮里藍がアメリカへ渡った後の日本ツアーをけん引し、ツアー通算13勝を積み上げた有村。一時はアメリカでスランプに陥った宮里藍を見て、「簡単にアメリカに行きたいなんて口にできない」と米ツアー挑戦を封印してきたが、25歳となった今、ようやく世界への挑戦をスタートさせる。
 これまで、スポット参戦した2010年のメジャー「クラフト・ナビスコ選手権」で9位に食い込むと、11年「HSBC女子選手権」では世界ゴルフ殿堂入りを果たしている大御所カリー・ウェブ相手に堂々の優勝争いを演じ1打差の2位。異国の地で世界の強豪に囲まれても実力を発揮しているだけに、どうしてもルーキー優勝が期待されるが――。

語学、環境、精神――越えなければならないもの

 ただ、そう簡単には行かないのが、強豪が集う米ツアーなのだ。有村の前には、越えなければならない『3つの壁』が立ちはだかる。有村には、忘れたくても忘れられない苦い経験がある。2010年の全米女子オープン。練習ラウンドをキャンセルしようと大会本部に伝えたが、それが「イエスしか言えなかった」ため、大会自体を棄権すると誤解され、一時は出場選手リストから名前が消えた。日本の報道陣からの指摘ですぐに発覚し最悪の事態は逃れたが、「これからは英語も勉強します」と涙ながらに心に刻んだのだった。現在ではアメリカ人コーチの指導を受け、環境になれるためアメリカ国内で何度も合宿を行っているため、そう凡ミスはないはずだが…。郷に入っては郷に従え。まずは『英語の壁』をクリアすることが、優勝への近道になる。

 さらに、米ツアーでは日本にはない『国内の時差』が待ち受けている。例えば、西海岸から東海岸へ移動する際、6時間の飛行機移動に3時間の時差が加わると、半日がかりの9時間移動に。それほどの長距離移動と毎週のように戦わなければならず、2006年参戦当初は宮里藍もこの軽い時差ぼけに苦しんだものだ。

 最後は、『自分を貫けるかどうか』。ほとんどが初めて回るコースとなるルーキーイヤーだが、 ほかの選手の攻め方に惑わされていては、自分を見失うだけ。自分のゴルフを貫けるかどうかも、大きなカギとなる。

歴史が証明するルーキー優勝の難しさ

 歴史を振り返ってみても、ルーキー優勝がどれだけ難しいかがわかる。1999年5月、福嶋晃子が参戦12戦目となった「フィリップス招待」で優勝を飾って以来、ルーキーイヤーに優勝した日本人はいないし、新人王に輝いたのは1990年の小林浩美(現・日本女子プロゴルフ協会会長)だけ。難しい壁をクリアしつつ、歴史を塗り替えられるのか。注目の初戦は2月28日の「HSBC女子選手権」が予定されている。

<了>
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著者プロフィール

サンケイスポーツを経て、2006年からフリーに。米女子ツアーを中心にバンクーバー五輪も取材し、新聞、通信社、ネットメディアに幅広く執筆(Twitterは@m_sachi)。2011年にニューヨークで第一子出産し子育て分野にも挑戦。ヤフージャパンで「NY発 子育て新常識」(http://bylines.news.yahoo.co.jp/miyashitasachie/)を連載している。

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