香川真司、幸運だったクルピ監督と乾との出会い=「香川を語る!!」 セレッソ大阪時代(後編)
J1昇格の原動力となった香川と乾
森島寛晃氏の背負った背番号8を継承した香川。乾とのコンビでJ1昇格の原動力となる活躍を見せた 【写真:杉本哲大/アフロスポーツ】
「あいつとはプレーのインスピレーションが合う。特にゴール前でのテクニックの感覚が本当に合うんです。特に会話をしているわけでもないのに、ゴール前のインスピレーションが一緒で、ゴールに対して、同じ絵を描いていることが多い」と香川が語れば、「あいつの動きは、特に話し合わなくても分かる。感覚ですかね。どこにいるか、何を考えているかが分かるんです」と乾も香川を評す。
この「幸福な関係」は、2人の強烈なライバル意識にもつながり、2人が織りなす競争が、さらに互いを磨き上げた。
「やっぱり意識しちゃいますよね。あいつがゴールを決めると、嬉しいけど、悔しいですよね。俺も負けたくないって」(乾)
「同い年ですし、チームメートであるけどライバルでもある。あいつが点を取ると、やっぱり悔しいですよね。お互い意識しあっているからこそ、悔しいのだと思う」(香川)
香川がゴールを決めれば、乾がゴールを決める。乾がゴールを決めれば、香川がゴールを決める。気がつけば2人だけでチームの総得点の約半分の47ゴールと量産(香川27ゴール・J2得点王、乾20ゴール)し、J1昇格の紛れもない原動力となった。
右肩上がりの成長もまだまだ続く香川の夢
クルピ監督の教えを、ベストパートナーとともに、しっかりと実践したからこそ、彼はより上のステージに行く権利を得た。クルピ監督は自らの下を巣立ち、さらなる成長を続けていく香川の姿を、まるで親のように目を細めて見つめている。
「これはブラジルでもよくあることなのですが、タイミングよく若手を起用しても、失敗するケースもあるし、タイミングが悪く起用しても、成功するケースもある。いろんなことが言えます。これはもう運命、運の部分だと思います。それを論理的に説明することは誰もできない。だが、大事なのは本人がサッカーが好きで仕方が無くて、それで飯が食べられる喜びを感じること。サッカーに対する愛情がないと成功はしないし、成長しないと思う。成功するかしないかの一番のカギは、夢を追い続けられるか、そうでないか。そういう意味では真司は輝いていた」
そして、クルピ監督が香川に送ったメッセージは、温かく、さらなる高みを目指してほしいという思いが込められていた。
「夢を抱くことをやめてはいけない。夢があってこそ、僕らは成功を勝ち取ることができるのだから」
香川真司の夢はまだ続いている。マンチェスター・ユナイテッドの一員として、世界のトップレベルでプレーをする。これが決してゴールではなく、さらなる夢に向かってのステップであり、これからもさらに「幸福の出会い」を重ねていくだろう。それがフットボーラー・香川真司の継続していくべき運命なのだ。
<了>