ゴールドシップ独り舞台、“常識破り”の二冠制覇=菊花賞

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掟破りどころか常識破りの早仕掛け

常識破りの3角手前からの仕掛け、それもゴールドシップの強さを信じていたからこそ 【スポーツナビ】

 そうは言うものの、単勝1.4倍の人気馬をいきなり最後方からレースを進めさせることは、並大抵の心臓の持ち主ではできない。さらに、「あんまりのんびり構えても、最後は大外を回らされますからね」と、今度は2周目の向こう正面から1頭だけ徐々にペースを上げて仕掛けていく。京都の長距離レースにおいて、3コーナー坂の手前で仕掛けることは“掟破り”とすら呼ばれる無謀な戦法。焦らずゆっくりと坂を上がって下ることが定石とされるのだが、内田博はその3コーナーのはるか手前、バックストレッチから仕掛けていったのだ。掟破りどころか常識破り、誰が見ても“仕掛けが早い”と思うだろう。しかし、内田博はさらりと言ってのけた。

「本当は自分もちょっと早いかな、とは思いましたが、ゴールドシップの強さを信じれていれば大丈夫だと思っていました。それに、早めにスパートしても持久力のある馬ですし、最後にまた伸びる脚を持っている器用な馬ですから」

 鞍上のこの言葉通り、3〜4コーナーで先行集団を外から一気に飲み込み、直線入り口で先頭に立つと、グイグイとさらに差を広げにかかるゴールドシップ。さらに、「後ろから馬が来ればまた伸びてくれる馬だから、併せ馬みたいな形になればいいなと、後ろから来る馬を探していたんです」という余裕を持っていたのだから驚くばかりだ。

次はJCか有馬か、「古馬との戦い楽しみ」

次走はいよいよ古馬との対戦、JCになるか有馬になるか 【スポーツナビ】

 1ハロンごとのレースラップを見ても、12秒6以下に落ちたラップが1回のみと、息を入れるヒマもないキツい流れだった。もちろん、そのペースを生んだのがゴールドシップであり、他馬にとってはこれ以上ない厳しい競馬だっただろう。単にレースに勝っただけではなく、同世代では1枚も2枚も役者が違った内容での菊戴冠。メンバーに恵まれたから二冠目を獲れた、とは誰も言わない、いや、言えないはずだ。

「いやぁ、自分の騎乗というよりも、馬が強いですよ。京都の向こう正面から脚を使って、最後の直線でまた伸びる馬なんてちょっといない。自分で競馬を作れる馬ですし、古馬との戦いが本当に楽しみですね」

 内田博の視線はすでに古馬との戦いへと向いている。それについて、この菊花賞VでJRA史上最速の100勝を達成(3年7カ月)した須貝調教師は、とりあえずは明言を避けたものの、「この後、馬の様子を見てから、オーナー、内田騎手と三者で考えていきたいですね」とコメント。順調に調整が進めば、ジャパンカップか有馬記念か――3歳最強馬の次なる“針路”を楽しみに待ちたい。

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