“ミスターレッズ”福田正博が語る浦和好調の理由=早くも浸透したペトロヴィッチスタイル

構成:ぴあ

スタジアムでしか見えない、特徴的なスタイル

阿部(写真)の加入はペトロヴィッチ監督のサッカーを体現する上で非常に重要だ 【Getty Images】

 そして、前述したビルドアップも他のチームには見られない特徴的な形だ。

「遅攻のときにディフェスラインがボールを持つと、今度は4−1−5と言えるような陣形をとります。前線にアウトサイドの選手も含めた5人が並び、ダブルボランチのどちらかがディフェンスラインに下がって4バックの形を作ります。ストッパーの槙野と坪井慶介は少しサイドにポジションを変えて、サイドバックの役割に変化します。今のところ、ボランチは阿部が最終ラインに下がり、鈴木啓太が中盤に残ってアンカーの役割を担うことが多いですね。

 最終ラインに下がった阿部とリベロの永田充が、前線に張り出したサイドアタッカーへロングボールを入れたり、中央の1トップ2シャドーへ縦パスを入れたりして、攻撃を形作っていきます。この4−1−5とも言える陣形はなかなか目にすることができないものですし、Jリーグだけでなく世界的に見ても異質な形です。ペトロヴィッチ監督のスタイルは、テレビの画面では映らない局面にこそ特徴的な面が出てきますから、ぜひスタジアムで見てほしいサッカーですね」

 ペトロヴィッチ監督のスタイルは、スタジアムに行けば十分に楽しめるようになってきているが、気になるのは若い選手があまり出場機会を得られていないところだ。ペトロヴィッチ監督は若手育成に長けているという印象がある。

「浦和レッズが結果を求められるクラブだということを、監督が理解しているからだと思います。広島のときとは、そこが大きく違いますね。若い選手の成長をうながすようなチーム作りを目指すのかどうか、そのあたりはまだ見えてきていない部分です。

 ただ、監督が現場でやられているチームマネジメントは、非常にうまくいっていると感じます。プロのクラブは、勝つことがすべてです。勝たなければチームをうまく回していくことは難しくなりますし、浦和のようにサポーターの多いクラブはプレッシャーが強いので、その傾向はより強くなります。ペトロヴィッチ監督は、そこを理解した上で、広島のときとは多少アプローチを変えていると思います」

 ただそうは言っても、浦和にはポテンシャルを持った若い選手が数多く在籍している。後半戦、上位での戦いを続けていくためには若い選手の働きもポイントとなってくるだろう。

「原口元気には頑張ってほしいですね。前半戦は選手を固定して戦ってきましたが、原口を筆頭として、若い世代の選手には頑張ってもらいたい。今年はまだあまりチャンスをもらえていませんが、彼らの突き上げがなければチームは活性化されていきません。

 原口だけではなく、小島秀仁や濱田水輝、けがで戦線を離脱している山田直輝も含め、ポテンシャルのある若い選手が在籍しています。彼らが少しずつでも試合に絡んでいって、レギュラーメンバーを脅かすような活躍を見せることができれば、必然的にチームはさらに良い循環になっていきます。後半戦は、若い力に期待していきたいですね」

<了>

(取材:浦山利史/撮影:鈴木俊介)

福田正博/MASAHIRO

福田正博氏 【撮影:鈴木俊介】

1966年生まれ。神奈川県出身。中央大学を経て、1989年に三菱重工サッカー部に加入。その後チームはプロ化にともない、92年に浦和レッズとなる。2002年の現役引退後、サッカーの普及活動に協力する日本サッカー協会のJFAアンバサダーに就任し、全国各地で幅広い普及活動をサポートした。また、サッカー解説者として、報道ステーション等でサッカーコメンテーターを務めた。08年から浦和へコーチとして復帰し、09年から監督に就任したフォルカー・フィンケの下でもコーチを務めていたが、10年に浦和を退団。11年よりサッカー解説者として、メディアで活動をしている。

Jリーグ通算228試合93ゴール 日本代表45試合9得点 06年・JFA公認S級コーチ取得

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