70歳のプロアスリート“艇界の隼”は『生涯現役』

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「やっぱり“気持ち”。勝ったら今でもすごくうれしい」

「年のことなんか考えたことがない」と、衰え知らずの闘志で時速80キロ以上の水上バトルを展開する 【t.SAKUMA】

 日本で初めてプロの公営競技としてボートレースが開催されてから、今年がちょうど60周年であることを考えると、今年選手生活53年目の加藤が歩んできた歴史は、そのまま、ボートレースの歴史であるといっても過言ではない。

「昔と今とではすべてが変わりましたね。マイナーチェンジどころじゃないですよ」

 船体やエンジン、競走体系、現在のモンキーターンに代表される操縦方法など、幾多の変遷・進化を遂げてきたモーターボート競走。そのたびに最先端から取り残されるのではなく、どうすれば早く対応できるかと常に試行錯誤と研究を繰り返し、61歳4カ月でSG競走・笹川賞で優勝戦に乗るなど、還暦を超えてなおトップ選手の一角として活躍してきた。

「やっぱり“気持ち”ですかねぇ。孫みたいな年齢の選手といっしょにレースを走ることもあるけど、年のことなんか考えたことないし、そんなこといちいち考えていたら続けられないですよ。それに勝ったら今でもすごくうれしいし、負けたらすごく悔しいですからね」

いつ辞めようか、なんてまだまだ考えていない

『生涯現役』――いつ辞めようか、なんてまだまだ考えていない 【t.SAKUMA】

 そして、50年以上現役を続けて、なお意欲と闘志を燃やし続けている一番の要因は、やはりボートレースが好きだから、と加藤は目を輝かせる。
「嫌になったことは1度もないですよ。ボートに乗ってるときが一番楽しいですからね。この仕事にすごく愛着を感じているし、いつ辞めようか、なんてまだまだ考えていないですから」

『生涯現役』――加藤はこの言葉に「そうですね」と笑顔でうなずいた。

「今年も元気に1レースでも多く走って、ファンのみなさんに喜んでもらえるようなレースをしていきたいですね。70歳でこうしてみなさんがお祝いしてくれますが、むしろ僕の方がファンのみなさんの応援で支えてもらっています。その声援に応えられるように頑張りたいですね」
 70歳の現役プロアスリート。新たな節目を迎えた隼は、きょうも熟練のハンドルさばきで水上を舞う。

【t.SAKUMA】

■加藤峻二
埼玉県出身。1942(昭和17)年1月12日生まれ。
身長163センチ、体重50キロ

<通算出走回数>
1万3982走(歴代1位)

<通算1着回数>
3248勝(歴代2位・現役1位)

<通算優勝回数>
119回(歴代7位・現役2位)

<SG級競走優勝回数>
通算4勝(歴代15位タイ・現役9位タイ)
1970年・総理大臣杯、72年・全国地区対抗競走、77年・笹川賞競走、77年・モーターボート記念競走

<G1級競走優勝回数>
21回(歴代12位タイ・現役3位タイ)

<生涯獲得賞金>
15億9699万8463円

<賞金王回数>
通算3回(1969、1979、1980年)

<優秀選手表彰>
最優秀選手:1977年
敢闘選手:1979、1980年
特別賞:1987、2002、2009年

※記録はいずれも2012年1月9日現在

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