進化し続けるバルセロナに死角はなし=セスク加入がもたらすさまざまな恩恵

豊福晋

セスクの加入がチームの総合力を上げる

バルサ加入後さっそく輝きを放っているセスク(左)。彼の存在がチームの総合力を上げている 【Getty Images】

 中盤もセスクの加入とチアゴの台頭などで層は厚くなった。特に、最大の変化としてセスクに触れないわけにはいかないだろう。彼のバルサ入りはチームの総合力を引き上げ、そしてセスク自身をも、選手として一回り大きくしようとしている。
 セスクは次のように語っている。
「バルサでの練習は僕がこれまでで見た中で最高のものだった。聞こえるのはボールの音だけ。タッ、タッ、タッと。こんなレベルの練習は見たことがない。毎日の練習が、試合よりもずっと魅力的なんだ」

 セスクがかつて所属したアーセナルの練習も、イングランドの中ではテクニックとパスワークを重んじたものである。にもかかわらず、バルサの、グアルディオラの練習は、わずか数日でセスクを虜にし、恐らくは晩年のアーセナルで欠けていた新鮮な刺激を与えている。
 セスクは古巣にすんなりと適応すると、プレシーズンに行われたガンペール杯(対ナポリ)と欧州スーパーカップ(対FCポルト)、そしてリーガ開幕戦となったビジャレアル戦と3試合連続ゴールを決めている。

 グアルディオラは、セスクをメッシのポジション、つまりセンターFWでプレーさせたこともあった。4−3−3のミッドフィルダーとして、また3−4−3のトップ下に置いたこともあった。指揮官はセスクの良さを「前のスペースへ飛び込んでいくプレー」としている。

2年前のチームよりあらゆる面で上回る

 バルサの中盤はブスケツ、シャビ、イニエスタで構成されることが多い。彼らが中心となり、そこに前線から下がってくるメッシも加わり、まるで練習のようにボールを回していく。ロンドをするかのようにピッチでパスはつながり、ポゼッションが70パーセントを越えることも少なくない。

 しかし得点という点に絞れば、必ずしもバルサのミッドフィルダーが多くの数字をたたき出しているわけではない。
 例えばイングランドでは、「セントラルミッドフィルダーは1シーズン15点」というのがひとつの目安とされる。フランク・ランパード(チェルシー)やスティーブン・ジェラード(リバプール)らのシーズン得点数と比較すれば、その差は浮き彫りになる。

 そんなプレミアリーグでプレーしてきたセスクには、得点への意識、そしてスペースを見つけ、飛び込んでいく動きが染みこんでいる。シャビ、イニエスタ、ブスケツにないものを、セスクはもたらすことになるだろう。
「シャビやイニエスタはそのほかの選手のプレーを容易にしてくれるんだ」とセスク。
 2011年のバルサにおいて、セスクの持ち味は生かされ、そしてチームはその得点に恩恵を受けることになるだろう。

 前線からのプレッシングの強化。セスク加入による得点力の増加。そして2年間という時間の中での成熟。2011年のバルサは、さまざまな面においてアブダビで世界一になったチームを上回っている。12月の日本で、彼らは2年前とは違う新たな姿を披露するはずだ。

<了>

(協力:FIFAクラブワールドカップ事務局)

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著者プロフィール

ライター、翻訳家。1979年福岡県生まれ。2001年のミラノ留学を経てライターとしてのキャリアをスタート。イタリア、スコットランド、スペインと移り住み現在はバルセロナ在住。5カ国語を駆使しサッカーとその周辺を取材し、『スポーツグラフィック・ナンバー』(文藝春秋)など多数の媒体に執筆、翻訳。近著『欧州 旅するフットボール』(双葉社)がサッカー本大賞2020を受賞。

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