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マエケンを飛躍させた“運命の一球”
「誰にも負けたくない」と意気込みを語る広島・前田健太
「誰にも負けたくない」と意気込みを語る広島・前田健太【黒田史夫】

 セ・リーグを代表する右腕として広島東洋カープの前田健太の名前を挙げることに、もはや何の異論もないだろう。昨季は最多勝(15勝)、最優秀防御率(2.21)、最多奪三振(174)でセ界の投手三冠王に輝き、投手で最高の栄誉とされる沢村賞も獲得。プロ5年目の22歳は、昨年4月8日の東京ヤクルトスワローズ戦の3回裏に投じた一球を飛躍へのターニングポイントに挙げている。

2010年4月8日。前田健太の体に舞い降りた感覚

――前田さんをして「何とも言えない感覚が舞い降りた」と言わしめる、カウント2‐2から2番・田中浩康に投げた一球をあらためて説明してください。


「うわっ、いいボールがいったと。自分が想像していたよりも速いストレートが、感覚的には低めのボールゾーンからストライクになった。実際はそうじゃないと思いますけど、結果的に見逃し三振だったので」


――状況は2死無走者。得点は0対0。さらに詳しく説明すると、直前の投球時に一塁走者の飯原誉士が盗塁を試みて失敗していました。


「追い込んでいたこともあったし、何よりもツーアウトから四球でランナーを出すのが嫌だった。せっかく石原さんが盗塁を阻止してくれたのに、カウントを悪くした挙げ句に四球でランナーを出すのは、あの場面では最悪の流れだったので。打ち取ろう、ヒットならいいか、という感覚でストライクを投げることだけを考えていたんですよ」


――フォア・ザ・チームの精神がフォームから力みを消し去ったことが、結果として奏功したのでしょうか。


「それまでは、目いっぱいの力で速いボールを投げるイメージだったんですけど。実際に試合に入れば、力を抜いて投げるのはどうしても怖い。初回から全力で投げて、いいバッターと対峙したり、ピンチを迎えた時などにはさらに目いっぱいの力を込める。ずっとそんなイメージだったんですけど」


――いわゆる「ゼロから100」の感覚は、前田さんがずっと追い求めてきたものなのでしょうか。


「いろいろな方が『力を抜いて、最後に入れた方がいい』と言っていたし、僕自身もそうした方がいいかと思って、練習であれこれ試したんですけど。当然のことながら、うまくいかない。そうこうしている間にシーズンも近づいてきたので、もうやめた、と」


――実戦の中で初めて理想を具現化できたことに驚かされます。


「正直、たまたまだと思います。でも、あの感覚を忘れることなく、その後も投げることができたのは良かった。あの試合を境に、ストレートが変わった。単純に言えば、スピードが出るようになった。それまで150キロなんて、いくら頑張っても出せたことがなかったのに。あの感覚をつかんでからは、何度も出るようになったので」

真のエースと呼ばれるための戦いが幕を開ける

――昨シーズンの有無を言わせぬ成績を見れば、もうエースと呼んでもいいでしょう。


「去年はそう呼ばれただけであって、もし今年がダメだったら、僕のことをそう呼んでくれる人は少ないと思う。これから先が大事。去年以上の成績を、何年も残していかないと。その意味では、去年はエースになるためのスタートを切れたと思っている」


――チーム内ではニックネームのマエケンをもじって「マケヘン」と呼ばれているほどの負けず嫌いですよね。


「誰にも負けたくない、という気持ちは強いですね。やっぱり勝負ごとなので、負けると悔しいじゃないですか。そういう性格も長所だと思っていますから(笑)」


――同じ1988年生まれの選手には、切磋琢磨(せっさたくま)していける存在が数多くいます。


「今年は世代的に取り上げられることが多いし、特にいいピッチャーが多いので。その中で田中将大(東北楽天)は別格というか、僕の中では同級生ではナンバーワンです。プロの1年目から活躍しているし、だからこそ負けたくないし、これからも競い合っていきたい」


――日本ハムの斎藤佑樹をはじめ、大学を経由してプロ入りした同級生に対しては。


「気になるというか、同級生なので一緒に盛り上がっていけたらと思っていますけど」


<了>


<論スポ記事より一部抜粋 写真=黒田史夫 聞き手=今井克範>

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