“守備の国”イタリアが下す長友の評価=シーズン序盤の活躍と今後の課題

宮崎隆司

イタリア代表の若手DFクリシートとの比較

サイドバックがイタリアで認められるには、やはり守備は欠かせない。今後はより高い守備意識が求められる 【Getty Images】

 長友の今後を占う上で1つの比較対象例となるのは、ベルゴミ氏が挙げた若手DFクリシート(長友と同じ86年生まれ、イタリア代表にも定着しようとしている左サイドバック)のプレーではないか。彼もまた攻撃力に長けた選手だが、長友のようなスピードはなく、そのプレースタイルは大きく異なる。現状、3−4−3(または3−5−2)を採用するジェノアではMFの左サイドを担っているが、ジェノアとユベントスで過ごしたユース時代から本職はDFだ。ちなみに、このクリシートは第7節を終えた時点で、先に紹介したDF部門の評価点平均でリーグ1位(6.50)に立っている。それぞれの代表チームで主軸となるはずのDF2人の今後に注目すれば、より客観的に長友の成長を確認できるはずだ。

 もちろん、そのほかのクラブでサイドバックを務める選手たちも同様の意味で注目に値する。以下は2010−11シーズン、セリエAの20チームにおける主なサイドバック(SB)一覧である(チーム名の右はシステム、カッコ内は代表もしくは国籍と生まれた年)。

ラツィオ 4−2−3−1
右SB:ステファン・リヒトシュタイナー(スイス代表/84年)
左SB:シュテファン・ラドゥ(ルーマニア代表/86年)

ミラン 4−3−1−2
右SB:ジャンルカ・ザンブロッタ(イタリア代表/77年)
左SB:ルカ・アントニーニ(イタリア代表/82年)

インテル 4−2−3−1
右SB:マイコン(ブラジル代表/81年)
左SB:クリスティアン・キブー(ルーマニア代表/80年)
左SB:ダビデ・サントン(イタリアU−21代表/91年)

ナポリ 3−4−2−1
右SB:ジャンルカ・グラーバ(イタリア/77年)
左SB:ウーゴ・カンパニャーロ(アルゼンチン/80年)

ユベントス 4−4−2
右SB:ズデニェク・グリゲラ(元チェコ代表/80年)
右SB:マルコ・モッタ(イタリア/86年)
左SB:パオロ・デ・チェーリエ(イタリア代表/86年)

パレルモ 4−3−2−1
右SB:マッティア・カッサーニ(イタリア代表/83年)
左SB:フェデリコ・バルツァレッティ(イタリア/81年)

サンプドリア 4−4−2
右SB:ルチアーノ・ザウリ(元イタリア代表/78年)
左SB:レト・ツィクラー(スイス代表/86年)

キエーボ 4−3−1−2
右SB:ジェンナーロ・サルド(イタリア/79年)
右SB:ニコラス・フレイ(フランス/84年生まれ)
左SB:アンドレア・マントバーニ(イタリア/84年)

カターニア 4−1−4−1
右SB:アレッサンドロ・ポテンツァ(イタリア/84年)
左SB:チーロ・カプアーノ(イタリア/81年)

ブレシア 4−3−1−2
右SB:マルコ・ザンベッリ(イタリア/85年)
左SB:シモーネ・ダッラマーノ(イタリア/83年)

ジェノア 3−4−3
右SB:“チコ”ホセ・マヌエル・フローレス・モレノ(スペイン/87年)
左SB:アンドレア・ラノッキア(イタリアU−21代表/88年)※本来はセンターバック
左SB/SH(サイドハーフ):ドメニコ・クリシート(イタリア代表/86年)

チェゼーナ 4−3−3
右SB:ルカ・チェカレッリ(イタリア/83年)
左SB:長友佑都(日本代表/86年)

ローマ 4−4−2
右SB:マルコ・カッセッティ(元イタリア代表/77年)
左SB:ヨン・アルネ・リーセ(ノルウェー代表/80年)

バーリ 4−4−2
右SB:ニコラ・ベルモンテ(イタリア/87年)
左SB:サルバトーレ・マジエッロ(イタリア/82年)

レッチェ 4−3−2−1
右SB:アンドレア・リスポリ(イタリア/88年)
左SB:ジェメル・メスバー(アルジェリア代表/84年)

カリアリ 4−3−1−2
右SB:フランチェスコ・ピサーノ(イタリア/86年)
左SB:アレッサンドロ・アゴスティーニ(イタリア/79年)

ボローニャ 4−3−3
右SB:ギョルギ・ガリクス(オーストリア代表/84年)
左SB:マッテオ・ルビン(イタリア/87年)

ウディネーゼ 3−4−1−2
右SB:メディ・ベナティア(モロッコ代表/87年)
左SB:クリスティアン・サパタ(コロンビア代表/86年)

パルマ 4−3−3
右SB:クリスティアン・ザッカルド(元イタリア代表/81年)
左SB:ルカ・アントネッリ(イタリア代表/87年)

フィオレンティーナ 4−2−3−1
右SB:ロレンツォ・デ・シルベストリ(イタリアU−21代表/88年)
左SB:フェリペ(ブラジル/84年)
左SB:ニコラ・グラン(セルビアU−21代表/89年)

(チームの並びは第7節終了時の順位)

長友の平均点を上回ったのはわずか5人

 このうち、全7試合に出場したのは16人。その中で長友の平均点5.93を上回るのは、わずか5人(クリシート6.50、ラノッキア6.36、バルツァレッティ6.21、ピサーノ6.07、ザッカルド6.00)のみにとどまる。

 チェゼーナは、第3節終了時には実に35年ぶりとなるセリエA暫定首位に立つも、第4節から3連敗、そしてパルマ戦で引き分け、12位まで順位を落としている。開幕当初の勢いに陰りが見られるが、唯一にして最大の目標である「セリエA残留」へ向け、難しい戦いを重ねる中でチーム力は着実に向上している。長友には新戦力から中心選手へ、さらなる活躍が期待される。

 11月7日には敵地に乗り込んでのユベントス戦が控える。そして件のクリシートとの対戦は第19節(11年1月9日)のジェノア戦で実現する。

<了>

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著者プロフィール

1969年熊本県生まれ。98年よりフィレンツェ在住。イタリア国立ジャーナリスト協会会員。2004年の引退までロベルト・バッジョ出場全試合を取材し、現在、新たな“至宝”を探す旅を継続中。『Number』『Sportiva』『週刊サッカーマガジン』などに執筆。近著に『世界が指摘する岡田ジャパンの決定的戦術ミス〜イタリア人監督5人が日本代表の7試合を徹底分析〜』(コスミック出版)

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